田舎ゆえに・・・
私は現在、人口20万位の街に住んでいます。
出身は山に囲まれた小さな町(当時で人口5000ぐらい)です。
少し前に久しぶりに故郷をたずね、同級生やその子供たちと話していると、
「あー、そういう幸せもあったなぁ・・・」
と、しみじみと思い出すことになりました。
一般的に田舎の魅力というと、
- 水が綺麗
- 空気が美味しい
- 人が温かい
- 土地が安い
などが思い浮かぶものですが、私が田舎に住んでいた頃にそれらの幸せを感じることはありませんでした。子供だったので当然ですが。
子供の頃の私が幸せだと感じていたこと、楽しみにしていたことは、親に月に一度ぐらい隣町(車で1時間)への買い物に連れていってもらうことでした。
幸せの価値観とは?
隣町と言っても大都会ではなく、人口が数十万の地方都市でした。
しかも私の親がその街の中心部の繁華街に連れて行ってくれたわけでもなく、郊外にある大型スーパー(特定の名前がある大きめの生協)に行くことでした。
田舎に住んでいた子供の私にとっては、ちょっとした家電や本やCDが売っている大型スーパーに訪れることは、ホントに楽しみなことでした。
故郷の同級生の子供が、
「明日は○○(大型スーパーの名前)に行くの♪」
と嬉しそうに言っていたことが、とても懐かしく感じられました。
幸せを感じるポイントは人それぞれですが、当時の私や同級生の子供にとって大型スーパーに訪れることは、間違いなく幸せなことでした。
当たり前のことですが、幸せの価値観というのは人それぞれです。誰かに押し付けられて決めるものではありません。
御馳走とは?
以前に御馳走の基準について紹介したことがあるのですが、
ご馳走も人それぞれです。全く同じ料理、食材でもご馳走と感じる人もいれば、そうではない人がいます。
小さな頃の私はメロンが大好きで間違いなくご馳走だったのですが、高校時代の夏休みに山小屋に住み込みでアルバイトをした時に、毎日余ったメロンを食べさせてもらったおかげで飽きてしまいました。
今でもお金を出してまでメロンを食べたいとは思えません。
幸せを感じる瞬間というのは、なかなか満たされないことが満たされた時です。
滅多に食べられない料理だからこそ、美味しく感じられます。喉が渇いていない時は、どんなに高級なミネラルウォーターを飲んでも美味しく感じられません。
ライフラインが満たされていない田舎だからこそ、たくさんの幸せを感じていたのだと気がつきました。
都会出身の方は田舎の水や空気に感動しますが、それが当たり前の田舎の方には感動がありません。
田舎と都会のどちらが良いとは決められませんが、田舎の不便さは必ずしも悪いことではないのではないでしょうか。
満たし過ぎない工夫を!
現在私が住んでいる街には、同じような大型スーパーがいくつもありますし、それよりも遥かに大きなショッピングモールもあります。
ですが、それらを訪れて感動することはありません。
大型ショッピングモールにも、いつでも行けると思うせいか、もう一年ぐらい行ってないかも知れません。
人は満たされてしまうと感動できなくなってしまいます。これはもったいないことだなと感じました。
同じようなことで思い出したのが、海への憧れです。
私が子供の頃は山に囲まれた町で育ったこともあり、海への強い憧れがありました。
社会人になって車を購入すると、わざわざ何時間もかけて海へドライブに出かけていました。そして海を何時間もボーっと眺めていました。とても楽しかったものです。
一方で現在は海沿いの街に住んでいるのですが、海を眺めることが全くなくなりました。
引っ越してきて間もない頃は何度か行きましたが、その時ですら「これからはいつでも海へ行ける」と思い、数分で引き返していました。
なかなか満たされない欲求や憧れが多いほど、幸せを感じる瞬間が多かったように思います。
田舎の魅力とは?
都会に住んでいる方が想像する田舎の魅力と、田舎に住んでいる人が感じている魅力にはズレがあるものです。
都会に住んでいるからこそ感じる大自然の魅力は、田舎に住んでしまうと色褪せてしまうかも知れません。
田舎の魅力というのは、様々なことが簡単に満たされない環境にこそ、あるのかも知れません。
不便だからこそ、幸せを感じる瞬間が多いのだと思います。
私が子供の頃に連れていってもらった大型スーパーでの一番の楽しみは、「たこ焼き」を買ってもらうことでした。
親に毎回買ってもらえるわけではないので、たまに自分のお小遣いで「たこ焼き」を購入していました。正方形のパッケージで九個入り300円だったのを今でも覚えています。
現在では田舎でもネットで何でも手に入るとは思いますが、「たこ焼き」のような体験は田舎だからこそ、なのではないでしょうか。
故郷の町では年に一度のお祭りの屋台でしか「たこ焼き」が売られていなかったので、最高のご馳走だったことを覚えています。
そんなことを同級生の子供と話していて思い出しました。
都会から見ると田舎の子供には塾や予備校もなく、好きな習い事やクラブチームに入ることが難しいので、可哀想に見えるかも知れませんが、田舎ならではの幸せをたくさん感じているのだと思います。
嬉しそうに、
「明日○○に行くの♪」
と言った子供に、
「○○の何が楽しみなの?」
と聞くと、
「パン!」
と答えてくれました。
故郷の町にも小さなパン屋がありますし、コンビニもあるのですが、色とりどりな様々なパンがある○○が楽しみなんだそうです。
私にとっての「たこ焼き」と同じようで、しみじみと嬉しくなりました。
都会が悪いわけではありませんが、便利になるほど不満が解消され、幸せを感じる瞬間が少なくなっていたのだと感じました。
安易に不満を解消するのではなく、ちょっとした不満を受け入れられる度量をもちたいなと感じた出来事でした。
コメント
田舎は年をとると病院が問題なのですよ
by 匿名