薬剤師は薬を飲まない?
今回紹介する本は宇田川久美子さんの「薬剤師は薬を飲まない」という刺激的なタイトルの本です。
著者の宇田川久美子さんはご自身が薬剤師だったのにも関わらず、薬を飲まないという方法で長年苦しめられていた頭痛や肩こりから解放されていった経緯があり、このような結論に至りました。
この「薬剤師は薬を飲まない」というタイトルだけだと、全て自然療法で治す方法を推奨されている方だと思うかも知れませんが、決してそうではありません。
先天的な病やウイルスによる感染症、または突発的な外傷などは、きちんと分けて紹介されています。
この薬が有効に働くケースとそうではないケースが、分かりやすく解説されている本なので、病と向き合うという事だけでなく、考え方という意味でも凄く参考になる素晴らしい本だと感じています。
薬では治らない病
ネタバレになってしまうので、あまり内容を詳しく書くことは出来ませんが、薬では治らない病というのは、あくまでも自分で引き寄せた病のようなことです。
慢性病と呼ばれる高血圧や糖尿病などは、薬で簡単に数値を改善することは出来ますが、それではそもそも血圧や糖が上がった原因を改善することにはなりません。
このそもそもの原因と向き合わない限り、一生薬を飲み続けてしまうことになってしまいます。
病院側からすると毎週のように通院してくれる常連になるので、ありがたい存在ではあるのですが、病を治すという本質ではありません。
この本質にアプローチする方法が詳しく解説されているのが、「薬剤師は薬を飲まない」の魅力です。
中でも私が気に入ったのは、胃腸薬の話でした。よくテレビCMで食欲がない人が胃腸薬を飲むことで、モリモリと食べられるようになるシーンがありますが、これは全く良いことではありません。
食欲がなくなる原因は色々なケースが考えられますが、何かしらの理由で脳が食べ物を受け付けないような信号を出しているから起こる現象です。
胃や食道が荒れているからなのか、既に十分な栄養が蓄えられているのか、もしくはどこかの内蔵の治療の為にエネルギーを使っているのか、何かしらの原因があります。
胃や食道を休ませる為に食欲が沸かないような指令を脳が出しているのにも関わらず、薬で無理やり誤魔化してしまうと、益々悪化するのはイメージできると思います。
風邪で熱を出して身体がだるくなるのも同じです。体温をあげて免疫力を高め、エネルギーを治療に集中する為に身体を動かさないような指令を出しているのにも関わらず、解熱剤で体温を下げて動いてしまうと、治療にエネルギーを集中することが出来ません。
さらに無理して食事まで取ってしまうと、消化吸収にもエネルギーが使われてしまい、ますます治療効率が落ちてしまいます。
犬を飼っていた人はわかると思うのですが、動物は身体の調子が悪いとあまり食事を取らずに、じっとしているものです。
これが最も治療効率が良いということを、本能から理解しているのだと思います。
ただ人間は知識があるだけに、
「いっぱい食べないと元気にならないよ」
「お薬を飲まないと治らないよ」
といった感じで余計な事をしてしまいます。せっかく上げた体温を下げてしまいます。
鼻水や咳が出るのも体内で不要になったものを排出する為の行動であり、それを薬で無理やり抑えてしまうと効率が悪くなってしまいます。
これらのように病を治すという本質ではなく、病による症状を抑えるのが薬の役割だということです。
もちろん耐えられないほどの症状が出たり、命に関わるほどの高熱が出た場合は別です。しっかりとお医者さんの管理の元に薬を使用するべきです。
ここを否定しているわけではありません。
ただ多くの人が漫然と飲み続けている薬というのは、このようなケースではないことが多いです。
そもそも薬を飲むことで病が治るのであれば、治ったら薬はいらなくなるはずですが、多くの人が飲み続けています。
これこそが薬では病が治らないことを証明しています。
あくまでも病を治すのは自分の力(免疫力)です。
「薬剤師は薬を飲まない」には、この自分の力を取り戻す秘訣が詳しく解説されています。
ここだけでも読む価値がある素晴らしい本なのですが、節約家にとっては「自分の心の声に耳を傾ける」大切さが学べると感じています。
病の治療と節約の関係
病の症状を抑える薬と、間違った節約というのは少し似ています。
いつも自動販売機で購入している缶コーヒーを、スーパーなどでまとめ買いすると節約になりますが、これは必ずしも正解とは言い切れません。
単純に安く購入することだけが節約ではありません。何の為に缶コーヒーを飲んでいるのかという本質を見極めないと、正解を導き出すことが出来ません。
職場の休憩時間に飲む缶コーヒーだと、わざわざ職場に持っていかなければなりませんし、温度も常温になってしまいます。休憩でホッと一息つけないかも知れません。
自動販売機であればコーヒーの種類も選べますが、まとめ買いをしてしまうと、その時々の気分に合わせたコーヒーは選べません。
職場の休憩時間に限っていうと、自動販売機の定価の缶コーヒーの方が、リラックスという目的を果たすことが出来ます。
最近は自宅で淹れたコーヒーをマイボトルに入れて持ち歩く節約家もいるのですが、これにも相性があります。
朝方の人であれば出勤前でも時間に余裕がありますが、早起きをしてまでマイボトルに入れるとなると、睡眠不足で仕事のパフォーマンスが下がってしまいます。通勤時のバッグも重たくなりますし、自宅に帰ってから洗う手間も増えてしまいます。
一方で毎朝自宅で眠気覚ましの為に缶コーヒーを飲むという人であれば、まとめ買いをすることは節約になります。
ただこの場合はインスタントコーヒーのような選択肢も考えられます。洗い物が増えるのがイヤだという人には向いていませんが、眠気覚ましの為のカフェイン摂取という目的であれば最も節約できる方法になります。
これらのように本質と向き合うことで、最適な節約方法というものが見えてきます。
いくらセールでお得だったからと、この本質から逸れてしまっている方法を選んでしまうのは節約でも何でもありません。
生活の質を落とすことなく固定費を削減するのは、上手な節約ではあるのですが、本当に今の生活の質が正しいのかと考える機会があると、無理なく生活の質を落とせる箇所が見つかるかも知れません。
この辺の節約のバランス感覚と、「薬剤師は薬を飲まない」で紹介されている内容が、とても似ているなと感じました。
「いっさい病院に頼らずに薬は飲まない」
のようなことではなく、きちんと本質と向き合い(心の声に耳を傾ける)、その時々で最適な選択肢を見つける感覚が学べると思います。
病院側の都合
「薬剤師は薬を飲まない」に書かれていたことではないのですが、これだけ日本人が薬漬けになってしまった原因というのは、おそらく病院側の経営の問題です。
あくまでもビジネスなので、利益効率を考えなければなりません。
通院してくれる患者(常連)が多いほど経営も安定するので、常に薬を処方するようになるわけです。
また日本の医療制度では有名な大学病院だからといって、診察料をあげるようなことは出来ません。治療の価格は保険点数で決められています。
なので少しでも多くの薬を処方するようになるのは、経営上仕方がない事なのかも知れません。
ただこれは患者側には関係がない事なので、しっかりと自分で判断しなければなりません。
これはマッサージで考えると分かりやすいかも知れません。整体の達人であれば肩こりを一発で治せてしまうのかも知れませんが、それでは常連になってくれないので、適当に肩をほぐす程度に収めた方が経営が安定するようなことです。
患者にとっては肩こりの痛みが和らいで嬉しいかも知れませんが、本当に求めているのは肩こりそのものを無くす事のはずです。
あくまでも肩が凝る原因を排除することこそが、肩こりを治す方法です。
肩の筋肉に負担が掛かる原因と向き合わない限り、マッサージのようなところに通っても、いたちごっこになってしまいます。
デスクワークの人であれば、椅子やデスクやパソコンモニターの高さを調整したり、座り方や姿勢を改善したり、パソコン用の眼鏡を作ることも効果的かも知れません。
これらのように肩が凝る原因と向き合うことがない限り、マッサージのような対処療法をしても治ることはありません。
これは多くの慢性病の薬にも当てはまることです。
腕が上がらなくて生活に支障が出るぐらいの肩こりであれば、マッサージで症状を抑えるのは悪いことではないのですが、それだけではマッサージに通い続けることになってしまいます。
一時的に薬やマッサージで症状を緩和することが悪いわけではありませんが、楽になった時に本質と向き合って生活習慣を改めることが大切です。
この本質と向き合う大切さがよくわかるのが、「薬剤師は薬を飲まない」の魅力です。単純に「薬を飲むな!」という内容ではありません。
まとめ 本質と向き合おう
節約にもセール品を選ぶような対処療法的な方法と、本質と向き合う方法があります。
どんなに安く売られていても必要のないモノまで購入していると、全く節約にはならないので気をつけてほしいと思います。
「薬剤師は薬を飲まない」を読むと、この辺のバランス感覚が学べると思うので、ぜひ節約家に読んでもらい名著です。
ちなみに私は十年以上前に、たまたま知り合った薬剤師さんとじっくりと話す機会があったのですが、この本のタイトルと全く同じことを言っていました。
その薬剤師さんは薬だけではなく、サプリメントや栄養ドリンクも一切飲まないとのことでした。
当時流行っていたグルコサミンやコンドロイチンなどには、全く科学的な根拠がないらしく、
「あれは集団詐欺だ!」
と声を荒げていたことを覚えています。
「薬剤師は薬を飲まない」にはプラセボ効果についての解説もあり、科学的な根拠がないものでも、本人が信用しきっていると効果が出るケースがあることも解説されているのですが、その為に薬の副作用まで受け入れることはありません。
自然な食材や適度な運動で健康になるのは誰もがイメージできると思いますが、それらの確信を高められると益々効果(プラセボ効果)が出やすくなるので、「薬剤師は薬を飲まない」は一度読んでおいて損はないと思います。
世の中には自然療法だけを持ち上げ、現代医療を否定するような本もたくさんありますが、「薬剤師は薬を飲まない」は安易にそのような事を言っているわけではないので、安心して読めると思います。薬剤師が書いているというだけに説得力が段違いですよ。
追記 心療内科の闇・・・
少し前に鬱病から復活した人が語っている動画を見たのですが、その人は様々な鬱関連の書籍を読み込み、現代の心療内科の闇について詳しく解説していました。
中でも印象に残ったのは、鬱病と認定するのは医者の簡単な問診だけであり、身体の状態の事を一切無視して決められるという点です。
いわゆる血液検査のような事もせず、ちょっと話をした医者が「鬱ですね」と言えば、それだけで立派な鬱病になってしまうのだそうです。
もしかしたらどこかの内臓の機能が落ちて身体の調子が悪くなり、それで精神的に参ってしまっていても、心療内科を受診すると「鬱ですね」となってしまうわけです。
病院側からすると定期的に薬を購入してくれる常連客になってくれるので、ほぼほぼそのような診断を下されてしまうそうです。
私が10年以上前に飲み会の席で知り合った心療内科の看護師さんも、「現代人で精神病に当てはまらない人なんていませんよ、全員何かしらの病名をつけられます」と堂々と語っていました。
本当に重度の鬱状態の人が薬の力で良くなる事がないとは言いませんが、中には別の要因で身体の調子を落としていただけなのに、鬱病と認定されてしまった事で重度の鬱病になってしまうような事もあるのかも知れません。
婦人科に行けば軽い更年期障害と診断されるものが、心療内科に行ってしまったばっかりに鬱病となるかも知れないわけです。
なんとなく「熱っぽいな~」と感じて体温を使って37.5度という結果が出ると、それまでそれほど辛く感じていなかったのに、一気に具合が悪くなってしまう事があるように、認定されるとその状態に引っ張られてしまう事は珍しくありません。
思い込みによってプラセボ効果が発揮される事があるように、逆に悪化してしまう可能性もあるわけです。
もちろん全ての医者があくどいわけではありませんし、立派なお医者さんや病院もあるとは思いますが、経営上の理由で高額な検査機器を効率よく回すような判断がされる事もあるのではないでしょうか。
これまたかなり昔に知り合った製薬会社に勤めている営業マンが語っていたのですが、彼らの仕事は医者の接待だけであり、月曜日から金曜日まで歓楽街のビジネスホテルを抑え、昼間はいつもヒマをしていました。
確か当時はジェネリック医薬品の出始めの頃で、いかに自社の薬を選んでもらえるかの勝負だったそうで、医者の指示があればいつでも料亭や怪しげなお店も抑え、タクシーチケットも使い放題で接待していました。
全ての医者がそういう人だとは思いませんが、中にはそのようなケースもあるので気をつけてほしいと思います。セカンドオピニオンのように他の意見も参考にしたり、それこそ「薬剤師は薬を飲まない」で学べる考え方も参考になると思います。
全ての医者や病院が悪いという事ではなく、何も考えずに鵜吞みにしてしまう事にリスクが潜んでいるので、客観的な判断や自分が本当の求めている事と向き合う為にも、「薬剤師は薬を飲まない」は読む価値があると思います。
コメント
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