ローカル番組「水曜どうでしょう」
みなさんは「水曜どうでしょう」というテレビ番組をご覧になったことがあるでしょうか。
「水曜どうでしょう」は北海道のローカル番組ではあるのですが、全国的に人気を得ているお笑い旅(?)番組です。
なぜに節約テクニックを紹介しているブログで「水曜どうでしょう」という番組を紹介するのかというと、何とこの番組を観ると「カウンセリングと同じような癒し効果がある」と紹介している本があったからです。
テレビ番組を観るだけでカウンセリングの効果があるのであれば、医療費を大幅に節約できる可能性があるということです。
これだけ聞くと大袈裟に聞こえるかも知れませんが、実は偶然にも私はこの効果を体験しており、その理由について解説されている本を読んだ時は驚きと共に、「なるほどなぁ~」と凄く感心してしまいました。
水曜どうでしょうが人気の理由
佐々木玲仁さんという臨床心理士が書いた「結局、どうして面白いのか 水曜どうでしょうのしくみ」という本があります。
この本は少し難しい内容(専門的)になっているので、単純に「水曜どうでしょう」のファンが読んだからと言って楽しめる内容かというと微妙なのですが、なぜに低予算で作られている地方のローカル局の「水曜どうでしょう」番組が、いかにして多くの人を惹きつける事になったのか分析されています。
演者の大泉洋さんやミスターこと鈴井貴之さんが面白い事はもちろんなのですが、「水曜どうでしょう」という番組の独自の特徴として、スタッフの立ち位置について詳しく解説されています。
普通のテレビ番組ではスタッフ、ディレクターの声が放送にのることは稀ですが、この番組に限っていえばガンガン支持が飛びます。さらに時々見切れて姿まで映し出されます。
現在ではディレクターやスタッフが表に出てくるテレビ番組が増えてきましたが、まさに「水曜どうでしょう」の影響だと言われています。
これこそが「水曜どうでしょう」ならではの特徴なのですが、ここにカウンセリングのような効果がある秘密が隠されています。
番組を見た事がある人はイメージできるのですが、スタッフの立ち位置といってもよくしゃべるのはディレクターの男性(藤村さん)であり、もう一人のカメラマンの人(嬉野さん)はそれほどしゃべりません。
そのカメラマンの立ち位置が、他の番組と比べて圧倒的に視聴者に共感を与えてくれるのだそうです。
その視聴者(カメラマン)に対して、たまに出演者にちゃちゃを入れてこられると、見ているこちらもその場に居合わせているような臨場感が得られやすくなります。
この独特な構造によって「水曜どうでしょう」は視聴者がその場に参加しているような感じになり、孤独を感じさせない特徴があるのだそうです。
憂鬱な状態の人というのは周りの人に理解されない孤独感にさいなまれているので、その孤独感を上手く支えてくれるのが「水曜どうでしょう」ならではの特徴だという事です。
これだけで癒し効果があるのですが、さらに番組の構成として何かしらの目的を達成する為に行動する流れにも、カウンセリングの手法と似通っている特徴があります。
カウンセリングの手法
著者が臨床心理士ということもあり、一般のうつ病患者に対するカウンセリングについての流れが解説されており、少し難しい表現なので私なりに要約すると、
カウンセリングとは憂鬱な状態の人に対し、様々な話を聞き出しながら、その人が無理なく取り組めるであろう小さな目標を見つけてあげ、憂鬱で停滞している状態から一歩踏み出すきっかけを与える作業です。
もちろん落ち込んでいる状態では大きな事など出来ないので、簡単に達成できそうな小さな目標を与えます。それを達成する度に少しずつ自信を取り戻す事になり、精神的にも安定していきます。
全国優勝を目指している部活の生徒のように、やる気に満ちている人を指導するのであれば、簡単には達成できない目標を与えても良いのですが、このやる気(モチベーション、動機)が失われてしまっている憂鬱な状態の人にとっては、ますますやる気を失わせる事になるので、この丁度良い目標をいっしょに見つけて上げる事こそが、カウンセラーの腕の見せ所だという事です。
うつ病の人に無理やり行動を促してもムリですし、「頑張れ!」と応援する事ですらご法度なので強制する事など出来ません。あくまでも自発的にやってみたい事を上手く聞き出し、そっと背中を押してあげるのがカウンセリングの手法です。
「水曜どうでしょう」という番組は、企画事に何かしらの目標があり、その目標に向かって散々文句を言いながらも、少しずつ進んでいく工程を見せてくれます。
その目標も大した意味があるものではなく、達成したからと言って感動のフィナーレが待っているわけでもなく、あっさりと放送されて終わってしまいます。昔のジャッキーチェンの映画のように、中国のドラの音が「じゃ~ん」となって終了となることも多いです。
あくまでも目標へ向かって文句を言いながらダラダラと進む過程を見せてくれます。
そしてその道のりも順風満帆にはいきません。様々な誘惑にかられてどんどん横道にそれていきます。時にはズルをしたり、ゴールを諦めたりもします。それでも文句を言いながらも一応はゴールを目指していきます。
このダラダラと横道にそれながらもゴールを目指すという工程が、まさにカウンセリングの手法と似通っているのだそうです。
やる気に満ちている人は気合いで一気にゴールを目指すことが出来ますが、うつ状態の人に正攻法でゴールを促しても上手くいきません。
なので必ずしもゴールを達成しなければならないわけではありません。とりあえず文句を言いながらも、その場から少しでも前に進むきっかけを探す作業がカウンセリングです。
だからこそ落ち込んでいる人、元気がない人、憂鬱な状態の人が「水曜どうでしょう」を見ると、どことなく心地良く感じるのだそうです。文句や愚痴ばかりを言う大泉洋さんのポジションが落ち込んでいる人にとっては心地良く、さらにその場に居合わせているような感覚を与えてくれるカメラマンに共感しやすい構造になっています。
自然と視聴者も一緒に目標に向かって旅をしている(行動をしている)ような感覚が得られるので、まさにカウンセリングを受けた時と同じような達成感が得られるという事です。
私自身も経験しているのですが、憂鬱な状態の時に目標に向かって真っすぐに頑張っている人(スポーツマンなど)を見ると、現在の自分の状態と比較して深く落ち込んでしまうのですが、しょうもないゴールに向かって文句を言いながら立ち止まったり、諦めたり、横道にそれながらも進んでいる人を見ると、すんなりと受け入れやすくなります。
これが「水曜どうでしょう」を観ているだけで、カウンセリングの効果があるということのようでした。あくまでも私なりの解釈なので、詳しく知りたい人は本を読んでほしいのですが、プロのカウンセラーからすると「水曜どうでしょう」の魅力は、単純に大泉洋さんの面白さだけではなく、番組の構成や制作方法など多岐にわたるとの事でした。
私の体験談
そもそも私が何故に「結局、どうして面白いのか 水曜どうでしょうのしくみ」という本を読んだのかというと、私は離婚直後に一心不乱に「水曜どうでしょう」を観ていた期間があったからです。
少し恥ずかしい話なのですが、私は離婚をして愛する子供と離れることになり、人生に絶望していました。何を食べても美味しく感じませんでしたし、なんだか世の中の色が薄くなったような気がしていました。
半年ぐらいそのようなどん底の世界の中にいました。おそらく精神科に行けば鬱病と診断されていたはずです。
仕事をしている時は気が紛れていいのですが、自宅で一人でいると寂しさと不安に押しつぶされる日々を過ごしており、急に涙が溢れ出てきたり、嗚咽がこみあがる事も珍しくありませんでした。
少しでも考え事をすると後悔ばかりが頭に浮かぶので、とりあえず気を紛らわせようとテレビをつけてはみるのですが、どの番組を観ても楽しくありませんでした。
特にバラエティー番組などうるさくて不快なぐらいでした。以前は大好きだったはずの「アメトーク」を見ても、芸人の笑い声に苛立ちを感じてしまうほどでした(現在は普通に楽しんで見られます)。
そんな状態の時に「水曜どうでしょう」をたまたま観ると、思わず笑ってしまった事に自分でも驚いてしまいました。
「あれ?テレビを見て笑ったなんてどれぐらいぶりだろう・・・」
と不思議に思い、どん底は抜けたのかとも思ったのですが、その他の番組を見てもまるで笑う事はありませんでした。
それから「水曜どうでしょう」のことが気になるようになり、知り合いに「水曜どうでしょう」が大好きな人がいたことを思い出し、DVDを貸してもらいました。誰かに連絡をしたのも久しぶりだったと思います。
そしてそのDVDを毎晩のように見続けていました。とりあえず「水曜どうでしょう」を観ている間だけは孤独感から逃れられました。
強い精神力の持ち主であれば、落ち込む事があってもパッと切り替えられるのかも知れませんが、私も含めて多く人はそう簡単に気持ちを切り替えられるものではないので、落ち込んでいる時間の過ごし方が重要になってきます。
そもそも悩みというのは、解決策がないから悩んでいます。何かしらの対処法があるなら悩まずに行動できるのですが、それが見つからないからこそ悶々とした日々を過ごす事になります。
誰にでも何かしらの悩みがあるものですが、数年前に悩んでいた事がスッキリと解決したかというと、ほとんどの人はそうではないはずです。大抵は悩みは時間の経過と共に諦めて薄れていっただけです。
愛する人が亡くなってしまった悲しみなど、当事者でもない限り分かるわけがありませんし、おそらく同じような経験をした人でも最適なアドバイスなど出来ません。周りの人が出来る事というのは、優しく見守るぐらいです。
大きな悲しみによって憂鬱な状態になってしまった人というのは、回復するまでに時間が掛かるのが当然であり、カウンセラーでも回復までの時間を早める事はできません。ただ遅くなってしまう事を上手に回避させてあげる事はできるという事です。
「水曜どうでしょう」という番組は、この辛い状態の時の時間の過ごし方として、凄く適しているという事です。
私が辛い時には「水曜どうでしょう」のカウンセリング効果の事など知らなかったので、たまたま頼る事になったのですが、本屋でこの本のタイトルを見た時にピンときてしまい、即購入してしまいました。
そして読んでみると、まさに自分が辛かった時期に支えられた理由が明確になり、改めて「水曜どうでしょう」の凄さに気づかされたというわけです。
まさかカメラマンのうれしーに自分の姿を投影し、いっしょに旅に参加して小さな達成感を得ていたとは思いもしませんでしたが、憂鬱な状態を支えてもらった事にとても感謝しています。
まとめ 心の支えに水曜どうでしょう!
今回は「結局、どうして面白いのか 水曜どうでしょうのしくみ」という本を勧めるというよりは、落ち込んでいる人や憂鬱な状態の人にとって「水曜どうでしょう」が心の支えになってくれる可能性があると伝えたくて紹介しました。
もちろん詳しくカウンセリングのメカニズムについて知りたい人は読んでみてほしいのですが、番組のファンが読んでも改めて「水曜どうでしょう」の凄さが感じられるかも知れません。
もし現在深く落ち込んでいて「水曜どうでしょう」という番組を一度も観たことがないという人は、是非機会を作ってご覧になってみてください。
節約的にはDVDの購入を勧められるわけではないのですが、中古なりレンタルなりを駆使して見てみてください。地域によっては再放送されているかも知れないので要チェックです。
とても不思議な空気感に包まれている番組なので、「元気がない」「なんだかつまらない」「やる気がでない」「とにかく辛い」と感じている人の心に、「水曜どうでしょう」は優しく(?)寄り添ってくれると思います。
もちろんお医者さんに「うつ病」だと診断されている人は、お医者さんの指示に従ってください。「水曜どうでしょう」を観るだけでうつ病が完治すると言いたいわけではありません。
あくまでも私の体験と本の内容を合わせて、憂鬱な状態の人にお勧めだという事です。
ちなみに名物スタッフのディレクターとカメラマンも本を出版しています。そちらのタイトルが「悩むだけ損!」です。
「水曜どうでしょう」の空気感を作り上げているのが感じられる内容になっており、こちらは「続・悩むだけ損!」「続々・悩むだけ損!」もあるので、番組のファンは楽しめると思います。
悩みというのは解決できない問題だからこそ悩むのであり、解決できない問題に時間をかけていても仕方がありません。だからといってパッと気持ちを切り替える事も難しいだけに、悩んでしまう時間を上手く手助けしてくれる「水曜どうでしょう」は心の支えになってくれます。
辛い時、元気がない時、憂鬱な時というのは、全うな正攻法では上手くいかないことがあるものです。
「元気がないなら肉を食え!」と言えるのは、元気な人だからです。落ち込んでいる状態の人が「肉を食べて元気になろう」とはなかなか思えませんし、無理に食べても吐き出してしまいます。
時間の経過と共に少しずつ回復してきたタイミングで、自らの意思で「肉を食べてみようかな?」と思うのであれば良い結果になるかも知れませんが、周りから強引に押し付けて上手くいくものではありません。
鬱には適度な運動が身体に良いと分かっていても、「そうか!」と気持ちを切り替えて出来るものではありません。「気合いだ!気合いだ!気合いだ!」と気持ちを直ぐに切り替えられるなら苦労はしませんし、そもそもそのような人は鬱になりません。
自分の身体や気持ちが回復するまでの時間の過ごし方が大事なのであり、その過ごし方も人それぞれ相性があるのですが、「水曜どうでしょう」という選択肢があるという事を覚えておいて欲しいと思います。
もちろん他の番組でも良いのですが、自分なりに苦痛を感じる事なく時間を潰せる方法を見つけておくと、いざという時の心の支えになってくれるはずです。
積極的に手を差し出して立ち上がらせてくれるわけではありませんが、いっしょに寝転んで微笑んでくれます。取りあえず今はこのままでも良いかと、その日を乗り越える事が出来るはずです。
過去の私のように悶々と後悔や考え事ばかりをしていると、ますます辛さや不安感が増して押しつぶされてしまうのですが、何か別の対象(仕事や趣味)に意識を向けている間だけでも楽になるように、自分なりに上手く気持ちを誤魔化す方法を見つけておきましょう。
悩みから逃げずに戦う事を良しとする意見もありますが、正攻法で立ち向かって勝負できるのは身体も心も充実している時だけであり、誰もが当てはまる状態ではありません。
身体だって寝不足で疲れている時に気合いだけで乗り切れるものではありません。若い頃であれば乗り越えられた事でも、現在の自分の身体にとっては出来ない事もあります。
これは精神的な事でも同じで、その時々で刻々と状況が変化していくので、今まで何とかなっていた方法でも難しくなる事があります。絶対的な正解などありません。
これは音楽の好みなどで考えると分かりやすいのですが、様々な人生経験を積む事で好みが変わっていきますし、若かった頃の自分の心に響いていた歌詞と、現在の自分の心に響く歌詞は全く違うのではないでしょうか。
中島みゆきさんの歌詞のような暗さが励みになる事もあれば、底抜けに明るい歌詞やメロディーに惹かれる事があるように、自分の好みだけで考えてみても心の状態によって心地の良い基準は変化していくのではないでしょうか。
そういう意味では「水曜どうでしょう」だって誰もの心の支えになるとは言えませんが、自分なりの心の支えになるポイントを理解しておくと、いざという時の強い味方になってくれると思います。
低予算で作られた地方のローカル番組の「水曜どうでしょう」が、世の中の多くの人に受け入れられたのは、それだけ多くの人が孤独に苦しんでいて自然と求めていた結果なのかも知れません。
不思議と「水曜どうでしょう」という番組は、同じ放送を何度も見ていても楽しめてしまう魅力があるので、節約という意味でもコスパが良いかも知れません(無理やり節約にこぎつけました苦笑)。
「水曜どうでしょう」が味方になってくれると、番組の冒頭に流れる「ちゃぁ~~~~ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃらぁらら~~」という気の抜けたメロディーを聞くだけで、すごく安心するものですよ。
誰もが「水曜どうでしょう」と相性が良いとは言いませんが、自分なりの「水曜どうでしょう」のような存在があると、人生の中で苦しい時の強い味方になってくれるので、深く考えずに心地よくボケーっと眺められるよう存在がなかったか、改めてチェックしてみてください。
コメント
無性にどうでしょうを見たくなる時がある。
思い返してみると落ち込んでいる時ばかりだった。
心身共に充実しているとさんまさんの番組で笑えるけど、
見るのが辛くなる時もある。
その理由が分かって感謝です。
by 匿名
へー、こんな理由があんだね。確かに思い返してみると、どうでしょうのDVDを手に取るときって絶好調ではないかもな。
by 匿名