今回は節約とは全く関係のない話です。
ランナーズハイはレア?
先日、趣味で長年ランニングをしているという人と話す機会がありました。ランニングによる疲労感が気持ち良いらしく、熱くランニングの魅力について語ってくれたのですが、
「ランナーズハイになったことはありますか?」
と私が聞くと、
「うーん、爽快感はあるけど、ハイという感じでもないかな~」
と言われました。そこで私がランナーズハイになった時の話をすると、目をランランと輝かせながら前のめりになって興味津々となり、
「本当にそんな感じになるんだ!!」
と驚いていました。その人が言うにはランニング仲間の中でも、ランナーズハイの体験者の情報が少ないらしく、貴重な話だと喜んでくれたので、今回は私がランナーズハイになった時の体験談を紹介しようかと思います。ランナーズハイについて調べている人の参考になれば嬉しいです。
思わぬ形でのランナーズハイ
私がランナーズハイを経験したのは今から20年以上前の中学生の頃です。その当時にランナーズハイという言葉を知っていたわけではなく、後からランナーズハイという現象を知って、「ああ~そういうことだったのか」と納得したものです。
中学二年生の頃に町が主催のマラソン大会があり、運動部の学生は強制的に出場させられました。私は野球部で長距離走は得意な方だったのですが、流石に学校で一番というわけではなく、クラスの中で2~3番目ぐらいといったレベルです。
それほど大きな町ではなかったので、中学生は男女混合で一斉にスタートしました。6キロマラソンの折り返し地点の前で、すれ違う人を数えていると20人ぐらい前にいたことを覚えています。
そして折り返し地点を過ぎた頃、一つ上の先輩の女子に抜かれました。
その先輩は女子陸上部のエースで様々な大会で結果を残しており、朝礼などで表彰されるほどの有名人だったのですが、私は女子に抜かれたという経験が初めてだったこともあり、ものすごくショックで必死になって追いすがっていました。
とんでもなく辛く苦しい状態でヒィヒィしながら先輩から離れないように頑張って走っていると、ある時から急に辛くなくなってしまいました(おそらく4キロ地点ぐらい)。
初めは先輩がペースを落としたのかとも思ったのですが、その間にも何人か抜いており、そうではありません。
気づいたら先輩の直ぐ後ろを走っており、なんだか遅いぐらいに感じて「抜けるのかな?」と少しペースを上げてみると、あっさりと抜くことができてしまいました。その時の先輩の苦しそうな表情が「え!?」となったのを今でも覚えています。
そのまま上げたペースを保っていても苦しくなく、「もっと行けるのかな?」といった感じで少しずつペースを上げても全く苦しくありません。自分でも怖くなるほど不思議な体験で、「え?まだ大丈夫なの?あれ?なんで?」といった感じでどんどんペースが上がり、最終的には100メートル走でも走るかのように大きく腕を振って全速力で走っていました。
おそらくこの全速力になったのが残り1キロ地点ぐらいで、そのままゴールまで全速力で走り抜けてしまいました。前を走る人をごぼう抜きして結果は5位でした。前の4人は全て陸上部の先輩達でした。
そしてゴールに着いても全く疲れていません。息すらあがっておらず、私よりも先にゴールして早く休んでいた先輩達が道路に腰を下ろして休んでいる中、私は立ったまま物足りなさすら感じていて、「まだまだ走れるのに・・・」といった心境だったことを覚えています。
これが私が体験したランナーズハイです。何とかゴールして爽快感や達成感があるようなものではありません。むしろ達成感はなく、「ん?あれ?どういうことだ?」といった不思議な気持ちになっていました。
ただし、次の日にとんでもないリバウンドが襲ってきました。
猛烈な筋肉痛
そうです。今まで体験したことがないような筋肉痛が襲ってきました。野球部だったので普段から身体を動かしていますし、それこそマラソン大会の前には長距離を走るようなトレーニングを課せられていたので、筋肉痛になるようなことは滅多になかったのですが、もう全身がバキバキになってしまい、太ももはもちろん、背中の筋肉痛が強烈だったことを覚えています。
マラソン大会の翌日は休日だったのですが、その次の日の登校日にも筋肉痛が収まっておらず、二日続けての筋肉痛を初めて経験しました。実家の階段の上り下りが本当にきつくて、手すりを離せなかった事を覚えています。
中年になった今は筋肉痛が二日目にくるような事がありますが、当時はハードな筋トレをして筋肉痛になったとしても翌日中には治っていたので、「ヤバい!これは筋肉痛じゃないかも!ケガなのかな・・・」と不安になってしまいました。
幸い三日目の朝には収まってくれたので安心したのですが、あまりにも不思議な体験だったので体育教師や陸上部の同級生に相談したのですが、誰も意味が分からないようでした。
おそらく当時はランナーズハイという言葉が一般的ではなく、インターネットで調べられる時代でもなかったので、わからず終いでした。
この時の体験は決して気持ちのいいものではなく、むしろ恐ろしいものだと記憶されたので、翌年のマラソン大会からは頑張らないようにしたほどです。高校時代でも限界まで頑張るような走り方はしませんでした。
その後に成人してからテレビか何かでランナーズハイという現象を知ることになり、図書館で詳しく調べてみると、私が中学生の頃に体験した不思議な出来事と一致して納得しました。
ちなみにランナーズハイの仕組みはWikipediaによると、
マラソンやジョギングを行うと通常、次第に苦しさが増してくるが、それを我慢し走り続けるとある時点から逆に快感・恍惚感が生じることがある。この状態をランナーズハイと呼ぶ。多くの検証実験から、この状態においては脳内にα波とモルヒネ同様の効果があるβ-エンドルフィンという快感ホルモンに満たされていることが判明した。この内、βエンドルフィンの増大が麻薬作用と同様の効果を人体にもたらすことで起こるとされる。運動中にβ-エンドルフィンがどう働くかのメカニズムは解明されていない
とありました。私は快感ホルモンで満たされて気持ちよくなったという感じではなく、ただただ不思議な感じでしたが。
ランナーズハイは危険!
趣味でランニングをしている人のどれぐらいがランナーズハイを体験できるのかは分かりませんが、経験者から言わせてもらうと危険極まりない状態なので、安易に目指すべきものではありません。
筋肉がしなやかな中学生の頃ですら強烈な筋肉痛になったほどなので、成人が同じ状態になってしまうと、疲労骨折や筋断裂といった大けがになってしまうかもしれません。
少なくとも健康目的でランニングをしている人は、決して目指してはいけない領域です。
「火事場の馬鹿力」といった言葉がありますが、普段の人間は身体が壊れてしまわぬように限界の力を出さないようにセーブしていると言われています。火事場のような緊急事態だからこそ、危険回避や大事な物を守るという強い意志が働き、杖をついていたはずのおばあちゃんが、重い仏壇を担いでしまうような事が起きます。
その時は興奮しているので痛みを感じないかも知れませんが、実際には圧迫骨折をしているかも知れません。
似たようなところだと、酔っぱらった状態でゲームセンターにあるパンチングマシーンに挑戦すると、成績が良くなる一方で骨折者が増えるといったものがあります。酔って気が強くなるというより、普段ならケガをしないように無意識にセーブしてしまうのが、酔って無くなるからと言われています。
命の危機がせまっている状態で危険回避の為にリスクを背負うのは仕方がありませんが、ランナーズハイは緊急でも危険回避でもないので、自ら望んで立ち入るものではありません。
自分の限界を知りたくてランニングを行うのは自由ですが、あまり健康に良い運動とは言えないので、ほどほどにした方が良いかと思います。現役を引退する頃のマラソンランナーは皆老けていますし、骨密度が極端に低かったりするので気をつけてほしいと思います。
気持ちよくなりたいなら他にもたくさん選択肢がありますし、わざわざ身体を酷使する方法を選ばなくても良いのではないでしょうか。
興味本位でランナーズハイを体験する必要はないと思います。5キロ走った後に全速力で1キロを走り抜けるなんて、身体に良いわけがありません。
そもそも運動による疲労や痛みというのは、脳がその状態が続くと危険だから出す信号です。危険を回避するための信号を快楽物資でごまかしてしまうと、ストッパーが効かなくなって壊れるまで酷使してしまいます。
たまたま私はマラソン大会中でゴールがあったわけですが、趣味のランニング中に同じ事が起きてしまうと、歯止めが効かずに壊れるまで突っ走ってしまうかも知れません。
個人的にはわざわざランナーズハイを体験することはおすすめしませんが、体験してみたいという人の参考になれば嬉しいです。ただ調子に乗って無理し過ぎないように気をつけてほしいと思います。