ゴールのない節約
何かしらの強い目的があって節約をしている方と、そうではない方では、節約に対するモチベーションに大きな差があるものです。
「節約ができない」「節約が続かない」という方の多くは、何となく節約を始めてしまった傾向があります。
- 何となく、家計が厳しいなぁ
- 何となく、貯金が増えないなぁ
- 何となく、将来が不安だなぁ
といった感じで、何となく節約を始めてしまった状態というのは、明確なゴールがない状態でマラソンを走るようなことです。そもそものゴール地点がないので、いつまで経っても達成感が得られません。
一方で何かしらの目的があって節約を始めた方というのは、しっかりとゴールを見据えています。
マラソンでいうと距離が明確な状態なので、「よし、折り返し地点まできた」「あと何キロか、もう少しだ!」といった感じで常に達成感が得られるので、ゴールまでモチベーションが低下しにくくなります。
何となくのままだと、明確な金額も期間も設定されていないので達成感が得られません。これが多くの節約ができない人に当てはまる特徴です。
何のために節約をするのか、いつまでにどれぐらいの金額が必要なのか、これを明確にするのが一番です。
ただ「漠然とした将来の不安」を感じて節約をしている方もいると思います。その不安の正体(年金額や老後に必要な貯蓄額)を明確にすることも一つの方法なのですが、今回紹介するのは節約をする期間を設定する方法です。なかなか節約ができないという方におすすめの方法です。
節約する期間の設定
これといった明確な目標がない節約でも、期間を明確に設定することはできます。
「節約ができない」という方は、まずは「1か月」という期間を設定してみてください。
短期的な節約であれば、日々ゴールに近づいている実感が得られやすくなります。
「今年の夏までに痩せて可愛い水着を着たい!」と新年に誓ったとしても、まだまだ期間に余裕があるだけに、いつまで経ってもダイエットが始まらないものです。夏が迫ってきたころに焦っても「どうせもう無理だ」と諦めてしまいます。
一方で1週間後に大好きな人と海に行くことが決定すれば、大抵の人はダイエットを頑張れるものです。目の前に明確な目標が迫っているので、イヤでも行動(食事制限や運動)したくなります。
これといって明確な目標がない節約をするにしても、予め短期的な期間を設けることで日々達成感が得られるようになります。ゴールが迫ってくるのでモチベーションが低下しにくくなります。
ちなみに私は学生時代に野球部だったのですが、ある年にコーチが変わってトレーニング方法が一変しました。まず練習始めにグランドを走らされたのですが、コーチが「OK」と言うまでひたすら走らされました。
いつ終わるかもわからないランニングは本当に辛いものでした。「あとグランド一周だ!」と分かれば頑張る気も起こるのですが、終わりの見えないランニングはとんでもない苦痛でした。グランドを周ってコーチの前に来ても声がかからなければ「また一周か・・・」とゲンナリしたものです。肉体的な疲労よりも精神的な疲労で参ってしまいました。
そんなことが毎日続き、あまりの辛さに部員全員でコーチに直談判をしました。「だったら○○公園まで行って帰ってこい!」と言われ、走らされる距離や時間は伸びてしまったのですが、精神的にはずっと楽だったことを覚えています。
節約も同じように目標や期間がないと達成感が得られません。ただの苦痛になってしまいます。だからこそ、まずは「1か月」という期間を設定してみてください。「あと〇日だ」と分かれば乗り越えやすくなります。
そして、この1か月の節約を乗り越えられると大きな気づきが得られます。それは貯金額の倍増です。
1か月の節約で貯金額の倍増?
1か月の節約で貯金額が倍増するというのは、実際に貯金額が倍に増えることではありません。
1か月で10万円の節約に成功して貯金額が倍増になる方というのは、そもそもの貯金額が10万円だった方だけです。
私が言いたいのはそういうことではなく、同じ貯金額でも捉え方が変わることで安心感が倍増するということです。
例えば100万円の貯金があるAさんがいたとします。
Aさんが今まで1か月32万円で暮らしていたとすると、100万円の貯金額で暮らしていける期間は約3か月です。
そのAさんが1か月の節約に成功して20万円で暮らせたとすると、同じ貯金額の100万円で暮らしていける期間が一気に5か月になります。
実際には節約した分の12万円も上乗せされるので112万円です。約半年もの期間、安心して暮らしていける貯金額になります。
貯金額が倍増したわけではありませんが、安心感は一気に倍増してくれます。
1か月で暮らしていける金額の認識が下がると、実際に節約で貯めた12万円以上の安心感が得られるということです。
そこからさらに様々な固定費を見直して毎月の支払額を1万円節約ができたとすると、1か月で暮らしていくのに必要な金額が19万円にまで下がります。同じ100万円という貯金額でも安心感がさらに増してくれます。
1か月の生活費が32万円のままで固定費を1万円節約したとしても、安心感はそれほど増えませんが、1か月暮らしていける最低の金額を知ることで、節約による貯金の増額以上の大きな安心感が得られるようになります。
これが「1か月」という節約期間を設定することで得られる大きなメリットです。
1か月という短期間の節約なのでモチベーションをキープしやすく、さらに大きな気づき(1か月で暮らしていける金額の認識)が得られます。
まとめ 「1か月」だけでも頑張ろう!
無理なく節約ができる方というのは、日々の節約による効果をその都度実感しています。数十円の節約でも気持ちよさを感じられるようになっています。
脳の思考回路がそのように出来上がっているので、節約そのものを楽しめるようになっています。
一方で節約ができない方というのは節約による効果を感じられません。数十円節約したところで何も変わらないと感じてしまいます。
この考え方を変えるために有効なのが、「1か月」という期間を設定して節約をすることです。
1か月の節約と割り切れば友達からの誘いも断れないことはないと思います。「ごめん、今月出費があって金欠なんだ、また誘ってね」と伝えれば、それほど人間関係に影響しないのではないでしょうか。
1か月の節約を達成して次の月から元の生活に戻ったとしても、1か月に暮らしている最低の金額を知った安心感は失われません。「いざとなったら20万円でも暮らしていける」と知っているので、心に大きな余裕が生まれます。
今まで月に1万円しか節約できなかった人でも、その1万円による安心感が一気に倍増します。
給料の手取りが33万円で毎月1万円貯金して32万で暮らしていたAさんが、約3か月暮らしていける現在の貯金額(100万円)を、半年分の192万円(32×6)まで増やすには、約7年半(92ヶ月分)もの年月が必要ですが、たった1か月の節約生活で「いざとなれば月に20万円で暮らしていける」と知ることが出来れば、一気に約半年分暮らしていける安心感(113万円)が手に入ります。
その後に元の1万円だけ貯金する32万円の生活に戻ったとしても、7年半後(92か月後)に貯まっている204万円(192+12)で得られる安心感は、半年分ではなく約10か月分(20×10)もの安心感に相当します。
全く同じ貯金額でも人によって得られる安心感は違います。
一億円という貯金額でも安心できないお金持ちはたくさんいますし、100万円の貯金額でも安心して生活できる方がいます。
貯金額を増やすのは簡単ではありませんが、貯金額に対する認識を変えることはそれほど難しくありません。
その為に有効なのが「1か月」という期間を設けた節約です。
「いざとなれば○○万円で暮らしていける」という基準を知ってください。
もちろん2か月でも3か月でも構いませんが、1か月未満だと生活費をイメージしにくいので、まずは1か月の節約生活を頑張ってみてほしいと思います。節約ができない、続けられないという人にほどおすすめです。
手っ取り早く節約をするのは食費や遊興費を減らすことですが、それらも1か月と割り切れば頑張れるのではないでしょうか。
さらに固定費の見直しができれば、その節約効果は毎月積み重なっていきます。
Aさんが生活の質を落とすことなく固定費の見直しだけで、生活費を32万円から31万円に節約出来れば、7年半後(92か月後)には296万円(100+12+92×2)もの貯金額になります。1か月に19万円で暮らしていけると知っているので、約16か月分もの安心感に相当します。
認識が変わると同じ貯金額でも安心感が大きく変わるので、節約ができない方は1か月だけでもいいので頑張ってみてください。これを乗り切ることが出来れば、生活は大きく変化すると思います。
安心感が生まれる(認識が変わる)と、ちょっとした節約による効果も変わります。100円という同じ金額の節約でも安心感が増しているので、より大きな達成感が得られるようになります。
この気持ちよさを感じられると、どんどん節約が楽しくなっていきます。脳が勝手に気持ちのいい方を選択するようになるので、イヤでも節約ができるようになります。
節約ができない方こそ、1か月という短期間と割り切って頑張ってみてほしいと思います。