「マッチョ=有能」は本当か?
当ブログではお金をかけずに取り入れられる簡単な筋トレやストレッチなどを紹介してきたのですが、それらには一貫して共通点があります。それは本格的な筋トレではないということです。
ここでいう本格的な筋トレというのは、いわゆる筋肉を太く発達させる為の行うトレーニングの事です。
効率よく筋肉を大きく発達させる為には、筋力の限界に近い負荷を短時間で与え、筋線維を破壊して筋肉痛になる必要があります。
そのような筋トレが悪いと言いたいわけではないのですが、私自身は筋肉を大きくすることにはこだわっておらず、どちらかと言えば若い頃のようなしなやかな筋肉を取り戻す為に、自由に筋肉をコントロールする方法を紹介してきました。
私自身はゴリゴリのマッチョではないですし、どちらかと言えばやせ型の細マッチョに分類されると思います。綺麗に腹筋がシックスパックに割れているわけではありませんが、軽くお腹を凹ませると割れ目が出るぐらいの体型です。
どのような身体を目指すのかは自由ですが、少し前にいわゆるゴリゴリのマッチョ系のサラリーマンと口論になりました。
筋トレする人は仕事ができる!?
彼は週に三回もスポーツジムに通っており、スーツの上からでもわかるほどの素晴らしい肉体の持ち主でした。
周囲の人が「凄い身体ですね~」と褒めていると、気を良くした彼が色々と語りだしました。お酒が入る席だったこともあり、どんどの内容もエスカレートしていき、最終的には「筋トレをしていない男は仕事ができない!」とまで断言してきました。
「最近は筋トレ系のビジネス書とかありますしね、そういう一面もあるんですかね~」
と話をつないでいると、
「筋トレしない奴はホントにバカ!ガリガリは無能!全然仕事できない!」
と追い打ちをかけてきました。その場にいる男性で彼以外にマッチョがいなかったので、場の空気がどんどん悪くなってしまいました。私も少しイラついてきたこともあり、
「流石にそんなことはないんじゃないですか?仕事の内容次第でしょう」
とやんわりと反論してみると、
「いいや、ガリガリの仕事は見なくてもわかる!見るまでもない!それにマッチョじゃないと相手になめられる!マウントできない!」
と言い返してきました。これ以上話しても意味がないと思ったので、さりげなく会話の方向をずらしていったのですが、彼のような考え方の人がいることに少し驚いてしまいました。
相手よりも有利な立場で強引に事をすすめると遺恨が残りますし、その後の仕事につながらないと私は考えていたので、身体つきでマウントを取ろうとする彼の姿勢に疑問を感じました。
ただ筋トレをするのが偉いと考えている人にとっては、相手の身体つきによって信用を量る基準に成り得るのだということは勉強になりました。
私自身も相手の清潔感や表情や姿勢や声色から信用や誠実さを量るようなことはありますが、筋トレをしている人にとっては、別の基準があるようです。
私にとっては新しい発見だったこともあり、筋トレ系のビジネス書を何冊か読んでみると、無茶苦茶な論理が展開されていて驚きました。
アメリカの論理
筋トレ系のビジネス書の共通点として感じたのが、アメリカのビジネスエリートの理論だということです。
デブが多いアメリカでは、マッチョな体型を維持している人ほど自己管理ができるという評価になりやすく、相手の信用が得られて仕事も上手くいくといった感じです。エリートビジネスマンほど、出社する前にスポーツジムで汗を流しているのだそうです。
だらしのない身体より健康的な身体の方がイメージが良いのは理解できますが、イコールで仕事ができるという論理には何も共感できませんでした。
これは「不細工よりイケメンの方が仕事ができる」のと同じぐらい曖昧な論理です。爽やかなイケメンや美人の方が相手に好かれやすいので、仕事につながりやすいのは確かですが、だからといって仕事ができる有能な人物だとは限りません。
特にネット社会では対人で取引する機会が減っているので、見た目の有利さは昔よりも減ってきています。もちろんホームページのデザインが怪しかったり、信用に値しないような薄っぺらい印象が影響することはありますが、これは生まれ持った容姿や筋トレで手に入れた肉体は関係ありません。
見た目の印象だけで選んでしまうと、肝心な中身の確認を怠って詐欺にあうかも知れません。最低限の清潔感や誠実さは大切ですが、そこだけで成功するほどビジネスは甘くありません。
アメリカでは太っている人は自己管理ができない証として認知されているようなので、出世に影響するのかも知れませんが、同じ事がそっくりそのまま日本で当てはまるわけではないですし、ましてやマッチョが有利に働くものでもありません。
もちろん健康的な身体が悪いわけではありませんが、それだけで上手くいくなら若いビジネスマンほど成果を上げやすいということになってしまいます。
マッチョのメリットは疑問だらけ
筋トレ系のビジネス書で紹介されていたメリットにも、疑問を感じました。
筋トレをすると様々なホルモンが分泌されてやる気が漲るとか、大きな身体は生物として相手に脅威を与えられて有利に事を運べるとか、いざという時に大切な人を守れるなど紹介されていました。
どれも間違いではないのかも知れませんが、漲ったやる気が仕事につながるとも限りません。仕事前に筋トレして疲れた状態で冷静に仕事と向き合えるのか疑問です。筋肉痛を抱えながら仕事に全力で向き合えるとも考えられません。むしろ眠たくなるのではないでしょうか。
大きな身体が有利なら、元バレー選手やバスケット選手やお相撲さんが引退後に大活躍しそうなものですが、そんな例はほとんど聞いたことがありません。
いざという時に大切な人を守れるというのも怪しいです。ケンカを売られにくいというメリットはあるかも知れませんが、マッチョで強そうなだけに腕自慢の相手に突っかかれやすくなるかも知れませんし、相手は人数を揃えたり、武器を用意するなど準備万端で仕掛けてくるかも知れません。
ある武術の本に書かれていたことなのですが、道場破り対策として表にごついマッチョを立たせておくと、相手は準備万端でやってくるので不意を突かれて打ち負かされてしまうのですが、弱そうな見た目の奴を立たせておくと相手がなめて掛かってくるので、簡単にやっつけることができるのだそうです。
下っ端に負けた相手は道場の中にさらに強い奴がいると考えてしまうので、それ以上は突っかかってこない事が多いのだそうです。マッチョのように強そうな見た目がゆえに、巻き込まれるリスクがあるということです。
また大切な人を守る為に戦うことだけが手段ではありません。そのような可能性の場に行かないよう冷静な頭の使い方の方が、ずっと大切な人を守ることができます。多少の雨に濡れてもびくともしない健康的な身体は立派ではありますが、事前に天気予報をチェックしたり、傘を用意したり、タクシーを予約した方が大切な人を守ることにつながります。
いかにもチンピラのような奴が前から歩いてきたら、早めに方向転換した方が大切な人を守ることにつながります。筋肉痛でうなだれているとリスクに気づけずにぶつかってしまうかも知れません。
子供やパートナーを道路側に歩かせないようにしたり、サッと動けるようにきちんと靴紐を結ぶ事が功を奏するかも知れません。
どんなにマッチョでもサンダルでは走ることなど出来ません。自分で靴紐を結べないほど大きな身体のお相撲さんのような体型では、大切な人など守れるわけがありません。
他にも相手を懐柔させる会話のテクニックの方が、実際には役に立つことが多いのではないでしょうか。いらだっている相手を力で押し付けるより、まずは謝って冷静さを取り戻すことの方が有利に事を運べるものです。あまり治安のよくない海外にでカツアゲされた時に交戦するより、ダミーの財布を用意しておいた方が大切な人を傷つけずに済むかも知れません。
マッチョにメリットがないとは言いませんが、こじつけただけのメリットが多いように感じました。一般の人にとって役立つものではありません。
まとめ 筋トレはほどほどに
筋トレをするのが悪いわけではありませんし、本人が仕事に役立つと信じているのであれば、それはそれで良いとは思いますが、その考え方を人に押し付けるものではありません。
ただそのような人がいるという事実は、知って置いたほうが良いのかも知れません。上手く相手の筋肉を褒めるだけで仕事が有利になる可能性があります。
健康の為に必要な筋肉というのは、そもそも太い筋肉ではありません。思いのままにコントロールできる筋肉があれば十分です。
体重制限のある格闘技を見るとわかりやすいのですが、必ずしもゴリゴリのマッチョが勝つわけではありません。素早く動く為には筋肉が少ない方が有利に働くケースは珍しくありません。
長年第一線で活躍してきたイチロー選手は筋トレをしていませんでした。もちろん様々なストレッチや野球のトレーニングはしっかりと行っていましたが、いわゆる筋肉を大きくするトレーニングは止めていました。
プロになって間もない頃は、シーズンオフの冬場にバーベルを持ち上げて鍛えていたのですが、シーズンが始まると成績が振るわないことが多く、筋力が落ちてくる夏場頃から調子が上がる事に気づいてから筋トレを止めるようになり、どんどん成績を伸ばすようになりました。
思うがままにコントロールできるしなやかな筋肉だけなので、ケガにつながるリスクもなくなり、長年活躍することが出来たわけです。
デスクワークが多い現代人に必要な筋肉量など知れています。軽い筋トレやストレッチだけで十分ですし、肉体労働でも仕事に関係ない筋肉まで鍛えてしまうと、身体が重たくなって仕事がしずらくなるかも知れません。
仕事に必要な筋肉は仕事の中で鍛えられるので、わざわざ極端に鍛える必要はないはずです。むしろ仕事で必要な筋肉を上手く使えるように、整えておくことが大切なのではないでしょうか。
モデルやボディービルダーのような仕事であれば、綺麗なスタイルや見た目の盛り上がった筋肉が仕事の成果につながるかも知れませんが、そのような仕事は多くありません。
引っ越し屋や荷下ろしをする仕事の人が休日に筋トレをして酷使してしまうと、筋肉痛で仕事に悪影響が出てしまうものです。むしろ温泉にでも入って休めた方が、仕事に好影響があるのではないでしょうか。
筋トレをするのは自由ですが、本当に仕事や健康に良いのかよくよく考えてほしいと思います。アメリカ社会で通用するテクニックが、日本でそのまま当てはまるわけではないですし、むしろ弊害になることもあるので気をつけてほしいと思います。
不健康な身体の人が仕事ができるとは言いませんが、必要以上に筋肉がある人が仕事ができるものでもありません。あくまでも思いのままに身体をコントロールできる健康な人ほど、仕事ができる可能性が高いというだけです。
自分の生活に役立たない筋肉を鍛えても、メリットどころかデメリットにしかならない事もあるので、しっかりと見極めてほしいと思います。筋トレはほどほどにして、若い頃の健康的な身体を取り戻せるような、ストレッチや軽い運動を取り入れる方がリスクもなくてお金も掛からないので、節約という意味でもおすすめです。
テレビの健康番組で紹介されていた寝たきりにならない為のトレーニングでケガをして、寝たりきりになってしまうようなケースもあるので、自分の身体の状態を向き合いながら、無理のないトレーニングを取り入れてほしいと思います。