ポジティブシンキングがいい?
久しぶりに再会した知り合いの女性が、とてもポジティブになっていて驚きました。
「何かきっかけがあったの?」と尋ねると、「ポジティブになる方法」を実践しているとのことでした。
それから数か月後に再び会うと、もとのネガティブな彼女に戻っていました。
ネガティブな状態が好きだという人は少ないと思いますが、だからと言ってポジティブになる方法を実践したところで解決する問題ではないのだと思います。
気分転換などで一時的にポジティブな状態になることはあると思いますが、その状態を維持させることは難しいものです。
またポジティブ、ネガティブというのは、あくまでも他人からの評価であり、自分には全く関係ないと受け入れることも大切です。きっちりどちらかに分けられるものでもありません。
このことを心から受け入れる為には、ネガティブに対する認識を変えることがポイントになります。
結論から言ってしまうと、ネガティブな発想が生まれて不安に駆られた時に、
「あ、もったいない」
と心で唱えることです。無理にポジティブになろうとする必要はありません。
ネガティブは損
ネガティブな状態を「もったいない」と考えられると、頭はスッと切り替わります。
ポジティブになるのではなく、ネガティブな状態を抜け出せるということです。
何故にネガティブな状態が損なのかと言うと、単純に「身体に悪いから」です。
考え事というのは、頭の中だけで行われる行為です。
きっかけは外部からやってくるかも知れませんが、そのきっかけを元に発想を膨らませることで、身体への影響力が高くなります。
考え方が身体に及ぼす影響力は膨大です。
ドキッと驚くだけで心拍数が上がります。体中を駆け回る血液の流れが速くなります。イラッとしても似たような反応が表れます。実際に体温も上昇します。
ドキッとしたり不安にかられている状態というのは、昔の人間であれば猛獣と出会った時のようなことです。急激に心拍数を上げて身体の隅々にまで血液を届けて戦闘モードにします。
戦うにしろ、逃げるにしろ、その場の恐怖から逃れる為の生体反応が表れます。
また好みの異性を見かけるとムラムラします。実際に身体に性的な反応(勃起など)も表れます。好きな人とのスキンシップを妄想することでも同様です。妄想がリアルなほど実際に性的な快感も得られます。
睡眠中の夢で絶頂に達するのはまさにこの反応です。実際に性行為を行っていなくても頭の中の想像だけで身体に影響を及ぼします。
映画や小説、スポーツ観戦などでも、その世界をリアルに感じられるほど生体反応が表れます。応援しながら興奮して手に汗を握ったり、涙を流したりします。
ネガティブな発想も同じです。
何かしらのきっかけでネガティブな発想を膨らませてしまうと、これらと同じように身体に何かしらの影響を及ぼします。
現代社会で猛獣に襲われる恐怖はそうそうあるものではないですが、のちのちに訪れるであろう悪い結論を今想像してしまうと、実際に猛獣と出会ったときのような生体反応が表れてしまいます。
実際に悪い結論が訪れた時にだけ反応するのであれば身体への影響も一時的なものですが、先の出来事に対してネガティブな発想をしてしまうと、結論が出るまで悪影響を受け続けることになってしまいます。
眠れない日々が続いたり、食事が喉を通らなくなったりします。
これがネガティブな発想が損だということです。単純に「もったいない」ということです。
実際に結論に対した時の悪影響の何倍、何十倍にもしてしまいます。
このことを理解するだけでネガティブな発想が沸いてきたときに、「あ、もったいない」と考えを切り替えられるようになります。わざわざイヤな出来事を増大させるなんてバカバカしいと思えるようになります。
ポジティブになる方法の嘘
一方で何かしらのポジティブになる方法を実践した場合、その効果は一時的なものがほとんどです。
根本的な結論に変化はないので、その結論へ近づくにつれ再び不安を感じるようになります。
しかも0の状態からマイナス100への落差ではなく、プラス100からマイナス100への落差です。中途半端なポジティブ発想は、よりネガティブな結論を強めてしまいます。
一週間後に苦手な人と会わなければならない場合、当日だけイヤな気持ちを受け入れるのであればマイナス100だけですが、中途半端なポジティブ発想で「きっといい人だから問題ないよ」とプラス100の状態で合ってしまうと、一気に200ものマイナスを味わうことになるかも知れません。
一方でネガティブ発想の方は一週間前からマイナスを受け入れてしまいます。当日のマイナス100だけではなく、一週間前から30、六日前は40、五日前は50のようなことです。
ポジティブ発想は一週間前からイヤな気持ちを積み重ねるよりはましかも知れませんが、当日だけと割り切った方が精神的にも肉体的にも影響は少なくなります。これが「もったいない」理由です。
ネガティブを直さないという発想
そもそもネガティブな発想というのは頭が良い証拠でもあります。頭の中で時間と空間を超えた発想ができるからこそ、恐怖や不安を増大してしまいます。
目の前に猛獣が表れた時に、楽観的に「大丈夫だよー」と考えて身構えもしないと、戦うことも逃げることもできません。
ポジティブが良いという風潮がありますが、返す当てもない借金を積み重ねてギャンブル三昧の方は、とてもポジティブと言えます。本気で本人は何とかなる(誰かが貸してくれる)と思っています。
ネガティブな発想が出来るということは悪いことではありません。一週間後に猛獣の狩りに行く場合、しっかりと事前準備するのはネガティブな人の方です。
ネガティブを直す方法に囚われて、無理にポジティブになろうとしてしまうと、ずっとこのループから抜け出せません。
まずはネガティブである自分を褒めてください。それだけで切り替え(もったいない)をしやすくなります。
まとめ ネガティブは変わる必要なし
日頃から質素な食事をしている方が、お正月におせち料理を食べると、とても幸せな気持ちになるものです。
一方で日頃から贅沢三昧の方は、ちょっとしたおせち料理では満足できません。同じぐらいの満足感を得る為には、三ツ星レストランの超高級おせち料理でなければならないかも知れません。
どちらが正しいというものではありませんが、ネガティブな方がマイナス100と想定していた人と会ったときに、思っていたよりもいい人でマイナス50だった場合、不安や緊張は大きく和らぎます。
一方でポジティブに「きっといい人だよ」と考えていた方は、そのマイナス50をそのまま受け取ることになります。後に引きずることになるかもしれません。
どちらが正しいというものではありません。
無理やりネガティブな発想を直そうとする必要はありません。ネガティブな発想のまま上手に暮らしていけばいいだけです。受け入れ方の問題だけです。
それが「あ、もったいない」です。
ネガティブな状態を続けていると、身体への悪影響があることを自覚してください。実際に悪い結果が得られる前から、不安を受け入れるのはバカバカしいと考えられるようになります。
事前に準備することで回避できる問題もありますが、大抵は当日にならなければ結果はわかりません。事前に不安に駆られる必要は全くありません。
不安や恐怖などが身体に悪影響があることを知るだけで、意外と簡単に「あ、もったいない」「今不安になってもしょうがない」「当日の結果だけ受け入れよう」と切り替えられるようになります。
それが出来る人をポジティブだというのであれば、ポジティブの方が良いのかも知れませんが、何も考えずに楽観的になることが正しいのではないということです。
無理やりネガティブを直そうとするのではなく、上手に付き合っていってほしいと思います。
この先に訪れるであろう出来事を、今リアルに感じられるということは頭の良い証拠です。人類が他の生物よりも高度に進化できた理由は、まさにこの能力です。
目の前の獲物とだけ対峙している多くの生物と違い、先のことまで考えて植物を育てられるのは人間だけです。
他の人よりもネガティブな発想ができる人は、それだけ進化している証拠です。
その素晴らしい能力を他の事に活かすためにも「あ、もったいない」と、切り替えて行動してほしいと思います。ネガティブを無理やり治す必要は全くありません。