高価なカシミヤのセーターがセールでお得!?
少し前に知り合いの男性が珍しく素敵なセーターを着ていました。
その男性はどちらかといえばファッションに無頓着なタイプだったので、「いいセーターだね、どうしたの?」と聞いてみると、
「いいだろ?これカシミヤのセーターなんだよ!セールで2000円引きだったんだ」
と嬉しそうに教えてくれました。さらに、
「やっぱり誰から見てもいいんだな~もう一着買おうかな~」
と気を良くしてしまい、ちょうど隙間時間があったこともあって、そのカシミヤのセーターが売られているユニクロに行くことになりました。
まだセール期間中だったこともあり、その男性は色違いのカシミヤのセーターを購入し、私にも勧めてきたのですが、
「セーターはあまり着ないんだよ~」
と、やんわりと断りました。
価格を見ると男性用のカシミヤのセーターが通常9990円のところ、セールで7990円になっていました。
高価な洋服がセール中でお得なのは間違いありませんが、おそらく私は1990円で売られていても購入しません。
なぜならカシミヤにはデメリットが多いからです。カシミヤならではの風合いや温もりといったメリットは否定しませんが、私のライフスタイルには適していません。
カシミヤのデメリット
ウールやシルクやカシミヤのような天然の動物繊維の生地は、メンテナンスを誤ると直ぐに台無しになってしまいます。自宅で洗濯をするのが難しい生地です。
実は私も節約家になる十年ぐらい前にユニクロでカシミヤのセーターを購入したことがあります。当時は1万円ぐらいしたと思います。
ただカシミヤの扱い方を全く知らなくて適当に洗濯をしてしまい、パサパサの風合いになって伸びてしまいました。
一般的な洗濯洗剤はアルカリ性なので、天然の動物繊維に含まれている酸性の油分を分解してしまうので、オシャレ着洗い用の中性洗剤で優しく手洗いしなければなりません。
さらに洗濯機の脱水によって伸びてしまうので、絞り方や干し方も気をつける必要があります。
この事を知らなかったので直ぐに台無しにしてしまったのですが、ウールやシルクだとカシミヤほど短期間でダメになる事はありませんでした。それからは動物繊維の洋服の洗濯を気をつけるようになったのですが、良い状態を保つ為には本当に大変なので、現在の私はほとんど手放してしまいました。
特にカシミヤは繊維が細いので毛羽立ちや毛玉が出来やすいという特徴があり、着用後に洋服ブラシでホコリや汚れを落とし、繊維に向きを揃えるといったメンテナンスが必要になります。
これを怠ると直ぐに毛玉が出来てしまい、ある程度の大きさになると取れてしまうので、生地もどんどん薄くなってしまいます。
洗濯をする度に他の衣類と擦れ合って毛羽立ってしまうので頻繁に洗濯は出来ないのですが、だからといって汚れないわけでもないので、汗染みなどで匂ってきたら水を張った桶で優しく手洗いしなければならず、頑固な汚れとなるとクリーニングに出すことになります。ただカシミヤやウールやシルクは別料金な事が多いのでそこでも大変です。
優しく手洗いした後でも洗濯機で脱水をしてしまうと型崩れしてしまうので、軽くしか絞れません。そこで普通のハンガーにかけて干すと水分の重みで生地が伸びてしまうので、干し方だけでも扱いが難しくて大変でした。
カシミヤのセーターは適切なメンテナスさえすれば何年も着続ける事ができると言われているのですが、その為には膨大な手間やクリーニング費用が必要になってしまいます。
カシミヤに限らずウールなどの動物繊維の洋服というのは、一日着用したら数日休ませるような手間が必要です。汗を吸った水分が蒸発し、繊維が元の状態に戻るまでに数日は必要だと言われています。
また天然生地だけに虫食いの被害にもあいやすく、衣替え一つとっても手間が必要です。強力な洗剤を多めに入れたり、漂白剤を足したり、頑固な汚れを落とす洗濯機のコースを選べないのに、汚れ残りがあると簡単に傷んでしまいます。
カシミヤならではの上品な風合いや温もりといったものは素晴らしいとは思いますが、私にとってはそれらのメリットよりもメンテナス面でのデメリットが上回ってしまうので、どんなに安価で売られていても欲しいとは思わなくなりました。
シーズン毎に洋服を買い替える人だったり、クリーニング費用に糸目をつけないような人であれば良いのかも知れませんが、節約家になった現在の私にとっては天然の動物繊維は相性の悪い生地です。
そもそもカシミヤのような希少性の高い天然生地の洋服というのは、貴族のような人が好んでいたものです。召使いにメンテナンスを丸投げし、自ら身体を動かして汗をかく事もないような人達が、自慢する為に着ていたようなものです。
最近は様々な企業の努力によって一般の人にも手が届く価格になってはきましたが、セールだったからと安易に購入してしまうと、せっかくのメリットよりもデメリットの方が上回ってしまう人が多いのではないでしょうか。
革靴も高級な物だと靴底も革が縫い付けられているのですが、革だけに雨を吸いやすく、縫い付けた糸からも水分が吸収されるので内側まで濡れてしまいます。
たまに雨の日の駅で滑っているサラリーマンがいますが、あれも大抵は靴底が革で平らな高級靴を履いているからです。
昔の貴族の馬車のようにハイヤーの後部座席で移動するような人であれば、そのような革靴でも良いのかも知れませんが、一般的なサラリーマンに向いているとは限りません。
これらのように高価な素材を用いたファッションアイテムの中には、実用性の事など考えられていない物もあります。セールでお得な価格だったからと安易に取り入れてしまうと、安物よりも扱いが難しくて寿命が短くなってしまうかも知れません。
おそらく冒頭で紹介したファッションに無頓着な彼が購入したカシミヤのセーターも、ワンシーズンも持たずにダメにしてしまう事でしょう。
それを指摘しようかとも考えたのですが、既に一着購入していましたし、何よりも本人が嬉しそうにしていたので、無下に批判するのも悪いと思ってスルーしました。
高価な洋服がセールになっているからと安易に飛びついてしまうと、結局は高くついてしまうかも知れません。
これはあらゆる物にも当てはあるものです。節約になっているつもりで、意外と損をしているケースがあります。
余計な機能はいらない!
私が初めてパソコンを購入したのは十数年前なのですが、当時の私はパソコンの知識が全くなかったこともあり、家電量販店の店員さんに相談しながら決めました。
12万円ぐらいの予定だったのですが、店員さんに勧められるがままに、ワードやエクセルが入っていてテレビが見られる17万のパソコンを購入してしまいました。
後からこれらの機能をつけるより、既に組み込まれているパソコンの方が3万円ぐらいお得だと言われ、無知な私は納得してしまいました。
そして、その後にワードもエクセルもテレビも使いませんでした。
一応テレビ機能は試してみたのですが、わざわざテレビからアンテナの配線を変える必要があり、しかも画質が悪くて何一つメリットを感じられませんでした。
その後は自分なりにパソコンに求めている機能が明確になったこともあり、余計な機能がないパソコンを購入するようになりましたが、ホントにバカだったなと反省しています。
無知な人ほどカモにされてしまいます。
洋服もセールや福袋でお得な価格だったからと、サイズがイマイチな物を選んだり、好みと違う色を選んでしまうと、結局はタンスの肥やしになってしまいます。
元々が高価な物だっただけに、処分するのももったいなく感じでしまい、長年放置される事になってしまいます。
誰だって詳しい分や興味のある分野の事であれば、自分が求めている機能が明確なので適切な物を選べますが、詳しくない分野となると様々な情報に惑わされてしまいます。
普段から1000円ぐらいで売られている物で十分なのに、2000円で売られている高機能な物がセールで1500円で売られていると、ついついお得そうで選んでしまう事がありますが、その高機能が必要ないと全く意味がないどころか、単純に500円多く支払っただけになってしまいます。
しかもその高機能のせいで使い勝手が悪くなってしまったり、余計なメンテナンスが必要になる事もあります。オシャレな装飾のあるカップほど洗いにくいような事です。
その高機能を求めていた人にとってはセールで安く買えるのは嬉しいですが、そうではない人がお得そうだからと安易に手を出してしまうと、お金以外も損をしてしまう可能性があります。
カシミヤのセーターも同じであり、デメリットよりもメリットが上回っている人でないと、購入してから後悔する事になってしまいます。
オシャレの為に購入したつもりでも、毛玉だらけでパサパサになったまま着てしまうと、お手頃価格のアクリルセーターよりも残念な印象になってしまうかも知れません。
まとめ 高価=高品質とは限らない
定価の高い物、高価な物がセールで安くなっていると節約になるような気がしますが、必ずしもそうとは限りません。
切れ味抜群の鋼の包丁というのは、定期的にきちんと研がないと切れ味がどんどん落ちてしまいます。
一方でそれなりの切れ味のステンレスの包丁であれば、たまに簡単な研ぎ器で擦るだけで、それなりの切れ味を保ってくれます。
抜群の切れ味が求められる和食の料理人であれば、プロの研ぎ師にお願いしてまで所有する価値があると思いますが、一般家庭にとっては重たくて使いにくくて切れ味の落ちやすい包丁になってしまいます。
もちろん一般家庭でも料理にこだわりがある主婦なのであれば、切れ味抜群の包丁を購入する事が悪いとは言いませんが、セール価格でお得そうだからと安易に選んでしまうと、安物よりも使い勝手が悪くなってしまう事があります。
セールでお得だったからと、安易に扱いの難しいカシミヤセーターを購入してしまうと、メリットを活かせるのは初めだけだったり、余計な費用が発生してしまうかも知れないので気をつけてほしいと思います。
カシミヤのセーターを売る側にとっては、きちんとしたメンテナンスをして長く着てもらうよりも、適度に傷んでくれたほうがシーズン毎に購入してもらえるので都合が良いのかも知れませんが、割引されていないアクリルのセーターの方が簡単な洗濯だけで、何年間も着られるかも知れません。
ファッションの好みは人それぞれなので、カシミヤのセーターを選ぶ事も悪いわけではないのですが、たまにメンテナンスの事を一切考えていないせいで、ズタボロになっている洋服を身につけている人がいるものです。
好きな恰好をする事で気分が高揚する人もいるので、それが目的なのであれば周りの人から評価など気にする必要はないのかも知れませんが、周りの人からオシャレだと評価されたいのであれば、メンテナンスのしやすさというのも大事なポイントになるのではないでしょうか。
私は清潔感さえあれば良いかなといった考え方なので、自宅で洗濯のしやすい基準で洋服を選ぶようになりました。オシャレ着洗い用の洗剤が必要な洋服は避け、アイロンが必要のないシワになりにくい洋服を選んでいます。
洗濯洗剤も洗浄力が強力で価格も安い粉末洗剤だけで事足りるようになりましたし、虫食いの被害もないので防虫剤も必要なくなりました。
私のような洋服選びが正しいと言いたいわけではありませんが、それぞれの目的に合わせて逆算して選ぶようになると、最適な洋服の基準が見えてくるので意識してみてください。
もちろんカシミヤのセーターもデメリットを理解した上で、メリットの方が上回るのであれば、セール中で安く購入する事は素晴らしい節約になります。そこを否定しているわけではありません。
ただ冒頭で紹介した彼のように、安易にセールでお得だからと購入してしまうと、直ぐに無駄になってしまうかも知れないので気をつけてほしいと思います。
高価な物ほど高品質とは限りませんし、自分の生活と相性が良いとも限りません。逆に安価な物でも低品質とは限りませんし、相性が良い事もあります。
そもそも品質というのは、それぞれの人が求めている機能次第です。カシミヤのセーターを着ている事で周囲の人から褒められるという機能を求めている人にとっては、耐久性など関係ないのかも知れませんし、その事に1万円の価値を感じる人にとっては無駄な事ではありません。
1万円の価値も年収が300万の人と1000万円の人で違いますし、メンテナンスの手間や費用も人それぞれ違います。
オシャレ好きな女性だと冬場でも薄着だったりするように、重要だと感じるポイントは人それぞれ違うので、一概に正解などあるものではありません。
あくまでも相性の問題であり、その相性は目的次第で変化するので、節約家の皆さんはしっかりと目的を明確にして選んでほしいと思います。
洋服に温かさという機能を求めている人であれば、カシミヤの他にも様々な選択肢が見つかるはずです。インナーを温かいタイプに変えるのであれば、1000円未満で解決するかも知れませんし、タートルネックのような形状の違いで解決するかも知れません。
どんなに高価な洋服がセールで安くなっていても、目的に合致していないと節約にはならないので気をつけてほしいと思います。
求めている機能と合致していない洋服ばかりが入っている1万円の福袋より、8000円で自分が求めている機能と合致している洋服を一着選んだ方が、結果的に節約にもなって満足できるものです。
冒頭で紹介したファッションに無頓着だった彼が、カシミヤのセーターのおかげでオシャレに興味を持つようになったのであれば、それはそれで立派な役割を果たしているので指摘しなかったのですが、ヨレヨレになったカシミヤのセーターで恥をかいてしまわぬ事を願うばかりです。
ただ恥をかくことで学ぶこともあるので、それも役割の一つとも考えられますが、節約家のみなさんは、しっかりと自分が求めている機能を明確にしてから、最適な物を選んでほしいと思います。
本当に求めている物を安く購入するのが上手な節約であり、不要な物を安く購入しても全く節約にならないので気をつけてください。
あくまでもカシミヤのセーターだダメなのではなく、相性が良い一般人はあまり多くないという意味なので、しっかりとメリットとデメリットを天秤にかけてから判断してほしいと思います。