早起きは三文の徳?
少し前に知り合ったやり手のビジネスマンが、毎朝4時に起床していると自慢げに語っていました。その人は毎朝軽い運動をしてから朝食を取り、仕事に関する資料や新聞に目を通すようになってから、成果が出るようになったそうです。
「早起きは三文の徳」という諺がありますが、その意味を調べてみると、
朝早く起きれば、健康にも良いし、それだけ仕事や勉強がはかどったりするので得をするということ
とありました。この意味だけだと朝早く起きることが健康に良い理由が曖昧ですし、仕事や勉強がはかどるというのも、早起きのおかげなのかというと疑問が残ります。
何かと忙しい朝に時間に余裕があると、焦らずに済むので安易なミスが起こらないようなメリットはあると思いますが、だからといって成果が上がる事とは関係ないような気もします。
脳が活性化する時間帯
しばしば脳科学的な本には、午前中が最もパフォーマンスが良いと紹介されているものです。学者によって時間が微妙に違うのですが、一般的には起床して3時間後ぐらいがピークになり、その後は緩やかに下がっていき、起床してから8時間後にはパフォーマンスが半減してしまうと言われています。
一般的な会社員のケースとして、朝6時に起きて9時から仕事を始める場合、仕事始めに前日の確認やメールのチェックに時間を費やしてしまうと、パフォーマンスが良い時間帯を逃すことになってしまうので、真っ先に一番大切な仕事から取り掛かるテクニックが紹介されているものです。
この説も全ての人に当てはまるとは限らないのですが、朝4時に起きてしまうと出社する頃にはピークを過ぎてしまい、脳のパフォーマンスが下がる一方の時間帯に仕事をすることになってしまいます。お昼過ぎには半減してしまいます。
私自身も午前中の方が仕事のパフォーマンスが良いのは実感しているので、極端に早起きをしてしまうと午前中からだらけてしまいそうで、あまり得なように思えません。
午後からの方が仕事に身が入るタイプの人には向いているのかも知れませんが、全ての人に早起きが良いとは限りません。
朝一の運動は健康に良い?
朝方の運動が健康に良いというのも微妙な気がします。運動するのに効果的な時間帯を調べてみると様々な説があり、これといってベストな時間帯が分からなかったのですが、朝一は体温が低く、身体の水分も少なくなっているので、激しい運動は向かないというのは共通でした。
筋トレに向いている時間帯や脂肪燃焼しやすい時間帯など、目的次第でベストな時間帯が変わるようなのですが、少なくとも激しい運動は向いていません。
少し前からビジネス書でも筋トレがブームになっており、私もいくつか読んでみましたが、アメリカのビジネスマンを参考にしていることが多かったです。
アメリカの優秀なビジネスマンほど早朝からスポーツジムで身体を鍛えているらしいのですが、そもそも日本人とは人種や文化や食生活が違うので、当てはまるようには感じませんでした。
アメリカ人は太っている人が多いこともあり、自己管理ができないとみなされて管理職になれないような文化があるようなのですが、これも日本ではそれほど当てはまりません。普通に中年太りの議員が活躍しています。
それに運動して疲れた身体で仕事に全力で取り組めるのかと考えると、微妙なのではないでしょうか。
軽い運動であれば問題ないのかも知れませんが、健康の為だけであれば通勤で少し歩く程度で十分なような気もします。
アメリカは土地が広くて車の維持費やガソリン代も安いので、それなりに都会でも日本人より歩く機会が少なく、運動不足になりやすいのかも知れません。
このような文化や生活習慣が違う国の成功法則が、そのままそっくり日本に当てはまるとは限りません。
出社時間ギリギリまで寝ることが良いとは思いませんが、極端な早起きはそれほど得でもないのではないでしょうか。
筋肉芸人である「なかやまきんに君」のYouTubeの動画にアメリカのスポーツジムのレポートがあったのですが、
インタビューに答えていたアメリカ人が何故に朝からジムに来るのかというと、単純に混んでいないからでした。人気のスポーツジムならではの理由であり、本当にビジネスの効率アップにつながっているのかというと、微妙な気がします。
三文の価値
ちなみに「早起きは三文の徳」の三文の価値というのは、ごくわずか金額の事を示しています。「一文無し」や「二束三文」で考えるとイメージしやすいかと思います。
一文銭が使用されていた江戸時代(1603年〜1868年)は結構長いので、一概に現代の貨幣価値で表せるわけではないのですが、だいたい30円前後だと言われています。
早起きは100円程度の徳ということになるので、年間で36500円と考えると節約家にとっては魅力的な数字かも知れませんが、少なくとも照明の電気代だけで元が取れる計算にはなりません。日の出が遅い冬場だと朝の6時でも暗いままです。
今まで通勤電車で指定席を使っていた人が、始発列車で通常料金で座れるようになるのであれば、それなりにお得になるのかも知れませんが、これも全ての人に当てはまるものではありません。
車でも朝の通勤ラッシュの時間帯を避けられると燃費が良くなるかも知れませんし、高速道路を使わずに空いている朝の時間帯の一般道を選ぶことでお得になるケースが考えられますが、フレックスタイム制の会社でなければ難しいはずです。
早起きは選択することでお得になる人がいないとは言いませんが、本当に自分に当てはまるのか、よくよく考える必要があります。
朝の5時に朝食を取ったことで、昼前にお腹が空いてパフォーマンスが下がるかも知れませんし、夕食後に直ぐに寝ることになって健康に悪い影響が出るかも知れません。
毎朝ギリギリまで寝ている人であれば、早起きをすることで忘れ物のようなミスを避けられるメリットがあるかも知れませんが、そうではない人にとっては必ずしも得になるわけではありません。
まとめ 徳の意味
そもそも「早起きは三文の徳」の「徳」は、「お得」の得ではありません。
「徳を積む」「人徳」といった言葉のように、品性や人格を表す言葉です。
遅刻をせずにしっかりと準備を整えられている人ほど、周囲の人からの信頼が得られるように、規則正しい生活を送ることが大切だという意味なのではないでしょうか。
極端に早起きをする事でもなく、運動や筋トレをすることでもありません。しっかりと準備を整えられる時間に起きることこそが、本質なのだと思います。
ちなみに「早起きは三文の徳」という諺を調べていると、続きの文が見つかりました。それは「早起きは三文の徳 夜なべは十文の損」です。意味は言葉の通りです。
徳が得られるということよりも、夜更かしによるデメリットを回避することが本質なのではないでしょうか。これさえ分かっていれば、極端な早起きには意味がないのも理解できると思います。
節約という意味では照明の電気代が掛かる夜より、朝方に生活をした方が電気代の節約にはなりますが、よほど広い家で煌々と昔ながらの電球の照明をつけている家庭でもない限り、三文(100円)もの得はありません。
一般家庭でよく使われている蛍光灯のシーリングライトの電気代は、1時間で2円程度のものです。3時間早く起きても6円程度の得にしかならず、三文どころか一文にも達しません。LEDならさらに少なくなります。
冒頭で紹介したビジネスマンのように、早起きをすることで仕事の成果につながるケースがないとは言いませんが、それほど多くの人に当てはまるものでもないので、しっかりと自分の生活に当てはめて考えましょう。
僅かな電気代の節約の為に、犠牲になるものがあるともったいないですよ。