たまたま枕がベッドから落ちた日
私は若い頃から慢性的な肩こりに悩まされており、様々なタイプの枕を試していた時期があります。
当時は現在のように節約を意識していなかった事もあり、医学博士が開発に携わったという機能性枕(8000円)を購入したり、デパートの寝具店でオーダーメードの枕(17000円)を作った事もあるのですが、これらの良さげな枕でさえ長続きしませんでした。
特にオーダー枕は高額だった事もあり、一ヶ月ぐらいは我慢して使い続けていたのですが、一向に慣れる気配がなくて参ってしまいました。
自分なりに枕の理想的な高さや硬さについて睡眠に関する書籍で勉強し、医学的には首の隙間の空間を枕で埋めた方が、頭部の重みを分散できて負担にならないという事を理解できたのですが、明らかに睡眠の質が落ちてしまいました。
昔ながらのそば殻の枕やストローをカットしたようなパイプ素材やビーズ素材の安価な枕は、変形しやすいだけに医学的には理想的な高さを維持できるわけではないのですが、自分好みの高さやしっくりとくる状態にしやすいメリットがあります。
個人的にはこの差が大きいと感じたのですが、眠りに入る前の心地良さや気持ち良さという面で、しっくりとこない機能性枕だと、なかなか寝つけずに参ってしまいました。
人それぞれ慣れ親しんだ枕の高さやフィット感があり、中身の弾力や枕カバーの肌触りなどにも相性があるので、そこに違和感があると寝つきが悪くなってしまいます。
睡眠中の姿勢としては医学的に考えられた枕の方が優れているのかも知れませんが、この寝つきの悪さが明らかに劣ってしまったので、結局は昔から愛用している枕に戻してしまいました。
ただその使い慣れているはずの枕でも日によっては熟睡できず、目覚めたときから肩や首に痛みがあるケースがありました。
そんなある日、東洋医学系のある本の中に「そもそも枕は必要ない」という一文を発見しました。
それなりに睡眠や枕について勉強していただけに、「そんわけあるかい!」と全く信じられなかったのですが、それから数日後にたまたま朝目が覚めると枕がベットから落ちていました。
ただ、その日の目覚めはとても良く、肩や首の痛みもありませんでした。そこでその本の内容を思い出し、その日から恐る恐る枕なしの睡眠を実践してみると、思いもしなかった結果になりました。
結論!枕は必要ない(私には)
結論から言ってしまうと、もう私には枕は必要ありません。
枕を使用しなくなると、目覚めた時に首や肩に痛みが出る事が一切無くなってしまいました。
眠りに入る前はフィット感がイマイチな機能性枕やオーダー枕と同じように、どことなく寝つきが悪い感じもあったのですが、目覚めた時の状態で考えると、どの枕を利用した時よりも良くなりました。
この理由を私なりに考えてみると、おそらく枕がないと寝返りをした後に枕のベストポジションを探る必要がなくなるので、睡眠中に目を覚ます事が少なくなったからです。
今までは寝返りをする度に軽く目覚めてしまい、無意識に手で枕の位置や向きを調節していたので、それが失敗すると寝違えて首や肩や背中が痛くなってしまっていました。
既に枕なしの睡眠を実践するようになって半年ほど経ちましたが、以前のような寝起きの当たり外れがありません。安定して安眠が得られています。
イメージとしては100点満点の睡眠というよりも、安定して90点の合格レベルの睡眠が得られるようになった感じです。
寝つきの良さという意味では、枕がないと慣れるまでに少し時間が掛かるのですが、睡眠中に寝違える事が無くなっただけに、トータルで考えると睡眠の質が向上してくれました。
「今までの常識は何だったのだろう?」
と思い、改めて枕を使っていない人がどれぐらいいるのかネットで調べてみると、枕を使用していない派が「7.4%」もいるという事が分かりました。
100人中7人ぐらいなので決して多い数字ではないのかも知れませんが、必ずしも全ての人に枕が必要ではないようです。
枕を使用していない人の中には、「首の皮膚のシワやたるみを抑える為に枕を使わない」という女性も結構いました。それで十分な睡眠が得られなくなったら美容にとって本末転倒ですが、それだけ意識が高い人が睡眠の質を軽視しているとも思えないので、おそらく問題はないのではないでしょうか。
ちなみに枕を使っていない有名人を調べてみると、女優の有村架純、ホスト界の帝王のローランド、女医の西川史子といった美意識が高い人が多く見つかりました。
そもそも寝相の悪い人は朝目が覚めると枕に頭が乗っていない事もありますし、必ずしも枕がないと安眠できないわけではないのかも知れません。
もちろん相性の良い枕を使えている人であれば、無理に手放す必要はありませんが、もしかしたら7.4%の人に当てはまっているかも知れないので、一時的にでも試してみる価値があるのではないでしょうか。
専門家の意見や医学的な根拠が間違っているとは言いませんが、コーヒー1杯だけで眠れなくなる人もいれば、5杯飲んでも安眠できる人がいるように相性の問題もあります。
統計すると「一日に3杯以上のコーヒーを飲む人は脳梗塞のリスクが低い」といった研究結果が出るのかも知れませんが、それで眠りが浅くなってしまっては、別のリスクが生まれてしまいます。
お酒の強さも人それぞれ違うように、あくまでも相性の問題なので、自分の体感も大切にしてほしいと思います。
参考にするべき情報元としては、私のような個人の体感よりも医学的な根拠や統計に基づいたデーターの方が良いとは思いますが、相性の悪いものまで無理して取り入れる必要はないはずです。
枕を売りたい側の都合を差し引こう
枕なしの危険性や機能性枕の重要性を訴えている情報が間違いだとは言い切れないのですが、そのような情報を発信している人の中には、「枕を売りたい側」の情報も含まれています。
「身体にあっていない枕を使用していると大変なことになりますよ」
と不安にさせ、その解決策として自社の枕を薦める流れが良く見受けられます。
身体に合っていない枕が悪影響なのは間違いありませんが、私のように枕そのものが悪影響を与えていたケースもありますし、人によってはそば殻やパイプ枕の中身を減らすだけで解決するかも知れません。
枕との相性はマットレスの柔らかさや頭の形や首のカーブなど様々な要因が絡んでいるので、一概に正解の高さや硬さの枕を決める事はできません。
仰向けで寝る人と横向きになる人でも相性が変わりますし、毛量や髪型の違いでもクッション性や高さが変わるかも知れません。
それこそ私の身体にとってはオーダーメードの枕でも相性が悪かったように、医学的には理想的な枕だったとしても相性が良いとは限りません。
枕に限った事ではないのですが、物を売りたい側というのは自社にとって都合の良いデーターばかりを並べてくるので、そこは差し引いて考えなければなりません。
これは保険に関する書籍を読んでいた時にも感じた事なのですが、それらの本は大抵は保険会社の研究員やアドバイザーが執筆しているので、
「保険は必要ありません」
という結果になる事が滅多にありません。保険の比較サイトでも「必要ありません」といった結果が出ることは皆無です。
もちろん中には良心的な著書もおり、元保険会社に勤務していたフリーのライターが執筆した本だと、
「ほとんどの生命保険は必要ない」
と強く訴えているものもあり、特定の状況や条件に当てはまる人に対して、
「最低限の保障がある○○のような価格の安い保険に入るのは有効である」
といった感じで紹介してくれているのですが、そのような本は広告収入を重視する大手メディアから紹介される事がないので、あまり売れずに世間に浸透しません。
枕の世界も少し似ているなと感じました。枕の機能や必要性についてアピールしている情報の多くが、枕を売りたい側ばかりでした。
枕を売りたい側の意見が必ずしも間違っているとも言いませんが、保険の外交員から「今のあなたの状況には保険は必要性ありません」とアドバイスされないように、「あなたに枕は必要ありません」とアドバイスされる事はありません。
枕は昔から当たり前のように寝具として受け入れられていますが、人によって身体に合わない枕があるように、枕そのものが合わない人がいてもおかしくないのではないでしょうか。
そもそも寝ている時の姿勢は一定ではありません。仰向けのままで寝相の良い人もいますが、多くの人は睡眠中に何度も寝返りをうちながら姿勢を変化させています。
たとえ身体にあった枕だとしても、身体の向きが変われば枕とのフィット感も変化します。ネックウォーマーのように体に密着している枕であれば、ある程度の姿勢の変化に対応できるかもしれませんが、枕は少しでも角度が違えばしっくりこないものです。
寝返りをうつにしても綺麗に横に回転できるとは限りません。大抵は身体を丸めながら行うので、首の角度も向きも複雑に変化します。
おそらく以前までの私も寝返りの度に目が覚めてしまい、枕の当たり具合を無意識に再調整していました。それが上手く行った日は目覚めが良く、少しでもズレてしまうと首や肩に負担になって寝違えていました。
どのような姿勢にも対応できる枕など、そもそも存在しないのではないでしょうか。
「枕なしは危険」といった研究結果が全てウソだとは言いませんが、枕を売りたい側の意見を差し引いて考えると、「7.4%の枕を使用しない派」がもっといてもおかしくはないのではないでしょうか。
もちろん全ての人に「枕は必要ない」と言いたいわけではありません。あくまでも相性の問題であり、その相性も身体の変化や衰えや生活習慣によっても変わっていくので、自分の基準で判断する事が大切です。
寝具の専門家や医学的な根拠を元に相性が良い枕を探すのは良いと思いますが、あくまでもそれらを参考に自分の体感で判断してください。人によっては私と同じように枕を使わない方が安眠できるかも知れません。
枕の機能
改めて枕の役割、機能について調べてみると、基本的には重たい頭部を支えて負担を減らす為とあるのですが、一部には髪型を崩さない為ともありました。
時代劇などを見ると箱型の高い枕を使用する婦人がいますが、まさにあれが髪型を崩さない為の枕です。仰向けで寝続けることが前提の枕です。
そのような髪型を崩したくない人にとっては、それなりの高さのある枕が必要なのかも知れませんが、それが良質な睡眠になる枕かと言えば疑問です。
最近は枕メーカーとは直接関わっていないであろうお医者さんが、バスタオルを少し巻いただけの低い枕を勧めるケースも増えてきました。
高過ぎる枕が良くないのは誰もがイメージできると思いますが、想像以上に低い枕の方が相性が良い人が多いのかも知れません。
そもそも自然界に枕のようなものを使って眠る動物はいません。
人間の赤ちゃんにも枕は必要ありませんし、この辺は専門家ですら勧めておらず、小学校に上がるぐらいまでは不要と断言している事が多いのですが、寝具メーカーからは赤ちゃん用の枕も売られているのが現実です。
かなり薄い枕でほとんど意味がないような物なのですが、まさに売りたい側の都合が見え隠れしているのではないでしょうか。
ペット用の衣類などもそうですが、赤ちゃんやペットの為になる事ではなく、親心を巧みに刺激して売りたいだけのような気もします。
まとめ 枕との相性の見極め
枕の機能というのは睡眠時の姿勢を保つ為の機能だけでなく、長年の習慣による安心感で寝つきが良くなるアイテムとしての機能もあるので、ここを分けて考えると相性の良い枕も見つけやすくなるのではないでしょうか。
小さな子供が大好きなぬいぐるみを抱きしめていないと安心して眠れない事があるように、枕にも睡眠時の良い姿勢の機能だけではなく、安心感の為だけに必要性を感じている人が少なくないのかも知れません。
慣れ親しんだ枕のおかげ眠りに入りやすい機能というのは、それはそれで立派な役割ではありますが、そのせいで睡眠中の質は下がってしまっているかも知れないので、しっかりと分けて考えてみてください。
私と同じように枕なしの方が安定して熟睡できる人もいるかも知れませんし、眠りに落ちる前の安心感だけなら、抱き枕で十分という人もいるかも知れません。
折り重ねたバスタオルの低さでも十分の人もいるかも知れませんし、使い古して潰れてしまったそば殻やパイプ枕の方がしっくりくる人もいるかも知れません。
もちろん高機能枕やオーダーメード枕のおかげで睡眠の質が向上する人もいるかと思います。それがダメと言いたいわけではありませんが、それなりの価格がするだけに慣れるまで無理して我慢して使いづつけてしまうと、相性が悪い物だとリスクになるので気をつけてほしいと思います。
人によっては枕カバーを替えるだけで相性が良くなるかも知れませんし、中身を調節できるタイプならお金を掛けずとも高さを変えられるので、色々と試してみるのが良いのではないでしょうか。
頭の重さや髪型や首の筋肉や長さや寝ている時の姿勢は人それぞれ違いますし、年齢による体型の変化や敷布団やマットのような他の寝具との相性にもよって変わるので、自分の体感と向き合いながら相性が良い枕を選んでみてください。
昔から使い続けている枕でも、体型の変化によって合わなくなる可能性がありますし、枕そのものが劣化してボリュームが無くなって合わなくなる事だって考えられます。
あくまでも自分にとって相性の良い枕を使用する事が大切なので、医学的に考えられている枕でも相性が悪いと意味がないので、そこは間違えないでください。
睡眠の質を高める事は下手な健康食品やグッズよりも、ずっと疲労回復に効果があるので、極端に節約するのはお勧めしないのですが、無理に背伸びをして高価な物を選んでしまうと、もったいない気持ちが働いて相性が悪い物でも使い続ける事になってしまうかも知れないので気をつけてください。
これが一番のリスクのような気がします。私自身もオーダーメードの枕をしばらく使用していましたが、きちんと計測して作ってもらっただけに「最高の枕なのだろう」と信じてしまい、しっくりこないのに使い続けてしまいました。
そういう意味では、いきなり高価な枕を試していくより、枕なしや重ねたバスタオルや中身の調節や枕カバーなどから試していった方が、元に戻しやすいだけに相性も見極めやすいのではないでしょうか。
私のように枕を必要としない睡眠というのは、あくまでも相性の問題なので誰にでも当てはまるものではありませんが、試しやすさという意味では抜群に簡単なので、一度試してみてほしいと思います。
長年の習慣として使っていた枕を使わないのは、常識というブロックが働いて難しいとは思いますが、一度常識を疑ってチャレンジしてみてほしいと思います。休日の前の日のように、次の日にあまり影響が出ないタイミングがおすすめです。
少なくとも私は枕なしの睡眠を実践するようになってから寝違える事が無くなりました。おそらく私に取っての枕の機能は、「眠りに入りやすい環境を整える」のみだったのだと思われます。
様々な枕を試してきた人や相性の良い枕が見つけられなくて悩んでいる人は、ぜひ一度枕なしの睡眠を試してみてください。相性が悪ければ元に戻せばいいだけです。
眠りに入るまでは違和感があるかも知れませんが、眠ってしまえば意外なほど関係ない人もいると思います。翌日に目が覚めた時に身体の調子と向き合い、相性が良ければ儲けものです。
追記 枕なしのデメリット
この記事を書いてからもずっと枕なしの生活をしていたのですが、ある時から頭皮の匂いが気になるようになりました。
私は石鹸やシャンプーの使用も止めているだけに、頭皮の皮脂の分泌は多くない方なのですが、急に気になるようになってしまいました。
枕を使用していた頃は頻繁に枕カバーを洗濯していたのですが、シーツはたまにしか洗濯をしていなかったので、頭皮の皮脂や汗が染み付いてしまっていました。
枕(カバー)には頭皮の清潔を保ちやすいメリットがあったので、現在は布団の上にタオルを敷くようになりました。重ねて高さを出すのではなく一枚敷いているだけです。フカフカのタオルよりも使い古したタオルの方が、顔がチクチクしなくて良かったです。
あともう一つ枕を使用しないデメリットとして、気になる情報が見つかったので追記します。
お年寄りほど肺炎で亡くなってしまう事がありますが、この原因の一つとして声帯の筋肉の衰えがあり、眠っている時に唾液や痰が肺に混入して肺炎が引き起こされてしまう事があり、その対策として枕を高くしたり、介護ベッドのように頭部と持ち上げる方法が紹介されていました。
これは枕なしのデメリットというよりは声帯の衰えが問題なので、カラオケに行って声帯を刺激したり、話す機会を増やすような事が有効なのですが、それが難しかった、寝たきりだったりする場合は、枕なしは避けた方が良いのかも知れません。
コメント
私も枕を止めた50代の主婦です。
長年悩まされ続けた首の痛みが全く無くなりました。
常識とはいったい何なんでしょうね。
by 匿名
普通の枕を抱き枕としてしか利用していないので
こちらの意見に賛同します
人それぞれですよね
by のん
まさかとは思いましたが、試してみると納得でした。私にも枕は必要なかったようです。旅行先でも枕を使わない方がよく眠れるようになりました。ありがとうございます。
by 匿名
私もオーダーメードで枕を作りましたが合いませんでした。テンピュールなどの低反発枕もダメで、結局は昔ながらのそば殻枕に落ち着きました。中に入っているそば殻もかなり量を減らしています。専門家の意見が必ずしも正しいとは言えないという意見に賛同します。今晩は枕なしにチャレンジしてみますね!
by 匿名
私は72歳ですが30代から枕を使っていません。はじめは家内にも笑われましたが今では家内も枕なしです。肩こりもなく、朝の目覚めもすっきりで、二人とも健康を続けています。
by 匿名
布団やマットの沈みとの相性も大きいですよ。私も以前は枕なしだったのですが、ウォーターベッドにすると頭が落ち着かないので硬めの低い枕を使用するようになりました。
by 匿名
私は枕なしはちょっと考えられないのですが、若い頃と比べて低くくはなってきています。枕カバーの素材も高さや気持ちよさに影響があるので、色々と試してみると良いのではないでしょうか。
by 児島