エコドライブの落とし穴
燃費を向上させる方法として、様々な「エコドライブ」が紹介されていますが、中にはとんでもない意見や危険なものまで含まれています。
もちろん素晴らしいエコドライブもあるのですが、運転に不慣れな人がエコドライブにとらわれ過ぎるのもよくありません。気を取られて事故を起こしてしまっては元も子もありません。
車の燃費は様々な条件で左右されるのですが、エコドライブのような運転方法の他にも燃費に影響を与える要素がたくさんあります。
そこで今回は燃費が悪くなる様々な原因を紹介します。それらを理解した上で車の燃費を適正値に戻してほしいと思います。
車の燃費が悪くなる原因
1 タイヤの空気圧
タイヤの空気圧が低下してしまうと燃費が悪化してしまいます。これはタイヤがたわむことで設置面積が増えて抵抗が増してしまうからです。
自転車でも空気を入れると軽くなることがあると思います。自動車のタイヤも同じように影響を受けています。
さらに空気が不足すると本来のタイヤの性能を発揮することが出来なくなるので、ブレーキや横滑りなどの安全性も損なわれてしまいます。そしてタイヤの寿命も縮めてしまいます。
理想はタイヤの空気圧は毎月調整することですが、せめて半年に一度ぐらいは調整をしてください。
大抵のガソリンスタンドで空気圧を調整してもらうことが出来ますが、最近の車はパンク修理剤と共に空気を入れるコンプレッサーも付属しているので、それを利用して自分で調整することも出来ます。
ちなみに昔はタイヤの空気圧を適正値の二割増しぐらいで入れると良いとされていたのですが、最近の車はエコの観点から適正値そのものが昔よりも高く設定されています。
特にエコモデルの場合だと相当高い空気圧に設定されているので、極端な入れ過ぎにはならないように気をつけてください。
車のタイヤの空気圧については、別のところでも紹介しているので参考にしてみてください。
2 荷物
車の中に無駄な荷物が多くあると、重たくなって燃費が悪化してしまいます。
特に車両重量が軽い軽自動車やコンパクトカーほど、燃費が悪化する傾向があります。
スペアタイヤを外してパンク修理剤が積まれるようになったのも、車両重量軽くして燃費を向上させるためです。それぐらい燃費に影響を与える原因になっています。
特にゴルフバックなどの重量があるものをトランクに積みっぱなしにしないように気を付けてください。
それほど重量がない小物でも、車内で転がってブレーキペダルの下に挟まって大事故になるケースもあるので、日頃からなるべく不要な物はおろしておきましょう。
ちなみに燃費を向上させる為に、ガソリンを満タンにしないという方法もあります。
ガソリンが40リットル入る車でも半分の20リットルぐらいをキープする事で、車重が15キロぐらい軽くなります。
それほど遠出をしないという車であれば、有効なテクニックです。
3 メンテナンス
車検を一部の悪質な激安店で済ませると、適正な整備を受けることは出来ません。
悪質なところは車検が通るためだけの基準で判断しているので、ろくに整備をしない事があります。次の車検まで安全に走れなくなるかも知れません。
自動車には定期的に交換が必要な部品やオイルがたくさんあります。それらを放置すると本来の性能が発揮できなくなり、燃費が悪くなってしまいます。
オイル交換を怠ってエンジンにダメージが出てしまうと、とんでもない修理費用が必要になる場合もあります。
バッテリーの性能も燃費に影響を与えるケースがあるので、日頃からきちんと車のメンテナンスをする事で燃費の悪化を防ぐ事につながります。
4 エアコンの使い方
自動車はエアコンを使用すると燃費が悪化します。だからと言って我慢して汗だくで運転すると危険です。
稀に燃費を気にしてなのか、夏場でも窓を前回にして走っている車を見かけますが、それだと車の空気抵抗が増して燃費が悪化してしまいます。
なので、車のエアコンは効率的に使用する事で燃費の悪化を防ぐことが出来ます。
炎天下に直射日光を浴びた車の中は、とんでもない温度に上がります。真夏日だと70℃近くまで上がることもあります。
その車内の温度をエアコンだけで下げては効率が悪いので、しばらく窓やドアを開けて車内の空気を入れ替えてください。
個人的におすすめなのは車に乗る前にドアの開け閉めを何度か繰り返すことです。これだけで車内の空気を外の空気と入れ替えることが出来ます。
ポイントはドアを二か所開けることです。後部座席のドアを少し開けておき、運転席のドアを何度か大きく開け閉めしてみてください。
また夏場に駐車場に車を停める時は、日陰を意識するのもおすすめです。
我慢してまでエアコンの使用を控える必要はないのですが、効率の悪いケースを上手く避けることがポイントになります。
ちなみに少しでも燃費を良くする為に、いっさい車のエアコンを使わないという人もいるのですが、これはお勧めできません。
エアコンを長期間動かさないでいると、ガスが通るパイプの内部が乾燥して劣化してしまいます。ガスは潤滑油の役目も果たしているので、季節によってはエアコンが必要ないケースでも、たまに動かすことで故障のリスクを下げられます。
ウィンドウォッシャー液なども同様です。中古車のようにしばらく使われないで放置されると、パイプの中が乾燥してひび割れの原因になってしまったり、藻やカビが発生する事もあります。
車のドアなども頻繁に開け閉めする運転席は油切れが起こってギシギシするような事が少ないのですが、たまにしか開けないドアがあると油切れを起こして傷ついてしまいます。
適度に使う事で良い状態を保たれる事になるので、車のエアコンも適度に使うように意識してみてください。私も車を運転する時は、暑くなくてもエアコンを少し(1分ぐらい)だけ回すようにしています。
5 オーバードライブ、エコモード
車に詳しくない人に多いのですが、燃費の良い走行が可能なオーバードライブやエコモードになっていないケースがあります。
これらのモードになっていないと、加速や減速を行いやすい「キビキビモード」になるのですが、これは加速が求められる高速道路の進入時や勾配のある山道などに向いているモードです。
車に慣れている人であれば、道路状況によって使い分けることが出来るのですが、あまり詳しくない人だと燃費が悪い状態のままということがあります。
そして少しややこしいのが、オーバードライブのスイッチを入れると、オーバードライブがOFFになります。
あのスイッチはオーバードライブをONにするスイッチではなく、OFFにするスイッチです。
メーターにオーバードライブ(OV)OFFと表示されていれば、スイッチが入っていること(キビキビモード)になるので、燃費の為にはON(ボタン解除)にしてください。
メーターからOV/OFFなどの表示が消えればOKです。シフトノブの周辺にボタンがあると思います。
エコモードもオーバードライブとは仕組みは違いますが、同じようなイメージです。
「キビキビモード」と「燃費のいいモード」をスイッチ一つで切り替えられるので、通常はエコモードにしておきましょう。
この辺は車種によっても違うので気をつけてください。日頃の運転はなるべく燃費の良いモードにしておきましょう。
6 運転
車の燃費は運転の仕方によっても悪化することがあります。
わかりやすいのは急のつく操作です。
急加速するとたくさんガソリンを消費して燃費が悪くなりますが、実は急ブレーキというのも影響します。
現在の車は減速時にはガソリンがカットされて燃費を抑える仕組みになっているのですが、急ブレーキが多い人というのは、それだけ減速する時間が短くなっています。
100メートルを走行する時に、90メートル地点までアクセルを踏んでいる運転と、80メートル地点でアクセルを離して徐々にブレーキを踏む運転では、後者の方がガソリンがカットされる時間が長くなるので、消費量が抑えられて燃費が向上します。
さらに理想を言えば60メートル地点でアクセルを離し、エンジンブレーキだけでゆっくりと減速していく方が、ガソリンがカットされる時間が長くなって燃費が良くなるのですが、あまり極端なことをすると周囲の車の迷惑になるので気をつけてください。
しばしばエコドライブを心がけている人が、このような運転をしているのですが、周囲に車にとっては大変迷惑です。
後ろに車がいなくても、脇道から出てくる車にとっては迷惑ということもあるので、真っすぐの道で周囲に車がいない時など、条件が揃った時だけ早めのアクセルオフを意識してみてください。
もちろん急加速、急ブレーキを繰り返すようなバカな運転は止めましょう。
7 暖機運転
車に詳しい人や年配の人に多いのですが、車を動かす前に必ず暖機運転をする人がいます。
暖機運転は車を動かす前にエンジンを始動させ、予めエンジン内部やトランスミッションなどのオイルを温める目的があります。
エンジンを始動すると当然ガソリンが使われるので、燃費は悪化してしまいます。
暖機運転の必要性については、色々なことが言われているのですが、少なくとも2,000年頃の車の本には、必要はないと紹介されていました。
昔の車はオイルの質が悪かったので、温度が上がる前に負担をかけてしまうとダメージを受けることがあったのですが、現在の車が普通に走る分には暖機運転は必要ないとされています。
いきなりアクセル全開にするような運転をする人はいないと思うので、普通に走る分には暖機運転は必要ありません。
ちなみに私が前に乗っていた軽自動車には、エンジンの回転数が表示されるタコメーターがついていたのですが、気温の低い冬場にエンジンを始動すると回転数が2700に上がりました。
エンジンが温まるとアイドリング回転数の800ぐらいに落ち着くのですが、エンジンを始動した直後はいきなり2700回転です。
メーカーの考えではエンジンが冷え切っている厳しい状態でも、いきなり2700回転まで上げても問題ない設計になっているということです。
ちなみにその車で60キロで走っている時のエンジンの回転数は2800回転です。
要するに普通に走行する分には、メーカーが条件の厳しい冬場でも安全だと定めている、暖機運転時の回転数を上回ることがないということです。
もちろん急加速してしまうと、低いギアでエンジンを高回転まで回してしまうことになるのですが、普通に走る分にはそのような事にはなりません。
もちろん車内が暑くなっていたり、冬場で冷え切っているのであれば、人間側の安全という意味で暖機運転が必要なケースがあるので、ここを間違えないでください。
私は北海道に住んでいることもあり、車の窓が凍ってしまうことがあります。このような場合は暖機運転で窓に熱風を当てて氷を溶かして視界を良くする必要があります。
解氷ウォッシャー液を使っていますが、凍るのはフロンガラスだけでないので、状況によって熱風の向きを変えて暖機運転をすることがあります。
真夏に直射日光を浴びてハンドルが握れなくなるぐらい熱くなっていれば、暖機運転をしてエアコンの冷風で冷やす必要があります。
これらのように暖機運転は車を運転する側の安全という意味では、必要になるケースがありますが、車のコンディションという意味だけでする必要はないという事です。
ちなみに極寒の北欧の車メーカーでも、暖機運転は必要ないと言っています。北欧は環境意識が高いこともありますが、車側の機能としては問題がない設計になっています。
まとめ 燃費を良くするよりも悪くさせない工夫を
車の燃費が悪くなる原因は色々ありますが、急加速のような運転だけではなく、車のコンディションによっても燃費は左右されます。
きちんとした車のメンテナンスを心がけることで、多くは解決してくれます。
車から無駄な荷物を降ろし、タイヤの空気圧を調整してください。そして適切な整備を行ってください。
自転車もメンテナンスを怠れば油切れを起こします、ペダルが重たくなったりブレーキの効きが悪くなります。他にもカゴに荷物を入れても重たくなります。
自転車のように人力だと僅かな違いを実感しやすいですが、車のエンジンだと中々実感することが出来ません。
知らず知らずのうちに燃費を悪化させてしまっている人が多いので、今回紹介した方法を意識してみてください。
燃費が悪い状態の車でエコドライブをしても効果は期待出来ません。きちんと車を整備することは燃費が良くなるだけではなく、安全運転にもつながります。
燃費を良くするテクニックも大切ですが、燃費が悪くなる原因を排除した上で、適切に取り入れてほしいと思います。
同じような理由で、燃費が向上するグッズにも注意が必要です。
燃費が向上したとしても、実際にはメンテナンス程度の効果しかないグッズが多いので、節約という意味でも無駄な買い物にならないように気をつけてほしいと思います。