自動車の燃費向上グッズはあやしい?
カー用品店に行くと様々な自動車グッズが販売されているものですが、中でも入れ替わりの激しいのが「燃費を向上させるグッズ」の数々です。
このようなグッズは昔からあるのですが、次から次へと新しいものが販売されては消えていきます。
多くの燃費向上グッズは数年で消え去りますが、中にはメーカーにまで採用されることになった効果の高いグッズもあります。
そこで今回は効果のない燃費向上グッズと、効果のある燃費向上グッズ(?)を紹介します。上手く見極めて節約につなげてほしいと思います。
効果のない燃費向上グッズの見極め方
まず初めにちょっと厳しい言い方をしますが、ほとんどの燃費向上グッズに効果はありません。
新開発されたものであれば燃費が向上する可能性がないとは言いませんが、過去の多くの燃費向上グッズが生き残っていないという事実が、効果がなかったという証明でもあります。
昔からよくある燃費向上グッズのパターンを紹介すると、燃料が流れるパイプに巻き付けてガソリンの質を上げるグッズだったり、エンジンが空気を吸い込むパイプの中に取り付けて、効率よく空気を取り入れさせるようなグッズがあります。
他にも車のボディにシールのような物を張り付けて、電流の流れを整えるといったあやしげなグッズも昔から売られています。
これらで本当に燃費を向上させる効果があるのであれば、自動車メーカーは間違いなく取り付けます。特許を買い取ってでも装着します。
各自動車メーカーは莫大な予算をかけて自動車を開発しています。特にエコタイプの車ではライバル車と燃費競争になるので、死に物狂いで燃費を向上させてきます。
目に見えない箇所を徹底的に軽量化したり、スペアタイヤを失くしてパンク修理剤にする車も増えてきました。そもそもスペアタイヤは普通のタイヤよりも細く軽く作られているのですが、それでも燃費を悪化させる原因になるので、より軽いパンク修理剤が増えてきました。
エコモデルの車だと燃料タンクを小さくしてまで軽くしています。自動車メーカーは出来ることなら何でもして、少しでも燃費を向上する為に日夜開発をしています。
カー用品店に売られている安価な燃費向上グッズを取り付けるだけで、本当に数%もの燃費が向上するのであれば、全ての自動車メーカーが採用するはずですし、開発したメーカーはカー用品店で売るのではなく、直接自動車メーカーに売り込んだ方が絶対に儲かります。
実際にそうなっていないという事実が、燃費向上グッズのあやしさ、嘘を物語っているのではないでしょうか。
ちなみに20年ぐらい前にカー雑誌を中心に「アーシング」という手法が流行ったことがあります。
アーシングとは車で使われている電気の流れを改善させ、エンジンの効率が良くなって燃費も向上すると言われていました。
当時は様々な自動車雑誌でアーシングの効果について取り上げられ、そして様々な検証がされた結果、実際に多くの車の燃費やパワーが改善されたという結果がでました。
車好きだった当時の私も愛車に取り付けてみたのですが、やはり燃費が向上したように感じました。
特に古い車ほど効果があるとされ、アーシングキットはカー用品店だけではなく、ホームセンターでも売られるほど人気の燃費向上グッズになりました。現在でも見かけることがあります。
これほど燃費向上の効果が話題になったグッズでも、自動車メーカーは採用していません。
その理由はバッテリーのメンテナンス程度の効果しかないからだと言われています。
バッテリーのメンテナンスというのは、バッテリー液の補充や比重の検査だけではありません。
バッテリーの端子の表面の錆や汚れを落として接点を良くする(電気の通りを良くする)ことも、バッテリーのメンテナンスに含まれます。
現在ではアーシングによる燃費向上の効果は、このバッテリーの通電不良の改善の効果だと言われています。
わざわざアーシングのコードを新しく加えなくても、日頃からしっかりとバッテリーをメンテナンスをするだけで同程度の効果があるという事です。
きちんとした整備工場やディーラーの整備では、車検の度にバッテリー端子やターミナルを金属ブラシで磨いて錆びを落としてくれますが、最近は激安車検などで整備の手順を省くケースが増えています。
また自分でバッテリーの交換をするケースもあるので、このようなメンテナンスがおろそかになっている車が増えています。
古い車ほどアーシングの効果があるのは、まさにこれが原因だと言われています。ディーラーなどできちんとした車検を受けている車にアーシングを施しても、ほとんど燃費向上の効果は期待できません。
アーシングキットを自分で取り付けられる人というのは、簡単な車の整備を自分で行えるだけに、バッテリー交換も自分で済ませています。だからこそ見落としがちなメンテナンスだったのかもしれません。
通電不良を改善させるエレクトリッククリーナー(⇒)という専用商品があるぐらいです。他にもバッテリーのターミナルに汚れや錆が付着しないように、ゼリーのようなもので保護するグッズも売られています。
それだけバッテリーの性能は、メンテナンス次第で変わるということです。
今回は燃費向上グッズの一例としてアーシングの例を紹介しましたが、多くの燃費向上グッズにも共通しています。
基本的にはメンテナンス程度の効果しかありません。
悪化していた燃費を元に戻す程度の効果はあるかも知れませんが、それ以上に向上するものではありません。
使い古して性能が落ちたエンジンオイルに、オイルの質を向上させる添加剤を入れると燃費が良くなるかも知れませんが、普通にオイル交換をするほどの効果はありません。
多くの燃費向上グッズは車がもつ本来の性能に近づける効果はあるのかも知れませんが、それらが通常のメンテナンス以上になるわけでもありません。
きちんとメンテナンスを行っている車に、これらのような燃費向上グッズを取り入れても効果がないということです。
ろくに車のメンテナンスをせずに安易に燃費向上グッズに手を出してしまうと、余計な費用が掛かるだけで全く節約にならないで気をつけてください。
これが理解できると、多くの燃費向上グッズのあやしさやウソっぽい宣伝文句に騙されなくなると思います。
一方で自動車メーカーが採用している燃費向上グッズ(?)も一部にはあります。
メーカーも採用している低燃費タイヤ
自動車メーカーが採用している燃費向上グッズ、それは「低燃費タイヤ、エコタイヤ」と呼ばれるものです。
低燃費タイヤは従来のタイヤよりも転がり抵抗を抑えて、燃費を向上させる効果があります。
転がり抵抗を抑えるだけであれば、タイヤを細くするだけでいいのですが、それだとブレーキの性能や旋回性能が失われます。要するにブレーキやカーブで滑りやすくなってしまいます。
低燃費タイヤの凄いところは、それらのようなタイヤとしての性能をキープしつつ、転がり抵抗を抑えているところです。
詳しいメカニズムについてはタイヤメーカーによって違うのですが、これらのような低燃費タイヤが、実際にエコモデルの新車に採用されるケースが増えてきました。
自動車メーカーも一定の効果を認めている証拠です。
これがまさに効果のある燃費を向上させるグッズではないでしょうか。タイヤ交換時に誰でも選択することができます。
ただし、通常のタイヤよりも割高です。たとえ燃費が数%向上したとしても元を取れるか難しい問題です。車の使い方にもよるのですが、頻繁に高速道路を使うような人であれば、燃費向上による節約効果が期待できます。
もちろん環境意識の高い人がエコカーや低燃費タイヤを選ぶといった選択をするのが悪いわけではありませんが、節約という意味ではエコタイヤの価格差の元を取れるかは微妙です。
タイヤは銘柄によって価格差や性能差があるのですが、空気圧が不足すると設置面積が増えて燃費が悪化するので、定期的に空気圧を調節する事が何よりも大事な事です。
そういう意味ではタイヤの空気が抜けにくい窒素ガス充填も燃費を良くする方法に当てはまるのかも知れませんが、定期的に空気圧を調節している車であればメリットはありません。
あくまでも燃費が悪化していた原因を改善できる可能性があるだけであり、通常のメンテナンス以上の効果があるわけではありません。ここを勘違いしないでください。
高性能は別
燃費を向上させるグッズと混同しがちなものとして、車の性能を引き上げることを目的のグッズ(パーツ)もあります。
それらを取り付けることで燃費が向上することは確かにあります。これは単純に車の性能が上がることで結果的に燃費が向上するからです。
車の重たいボンネットを鉄ではない軽い素材(FRPやカーボン)に交換すると、車両重量が大幅に軽くなるので結果的に燃費も良くなります。
自動車メーカーがスペアタイヤを失くしてパンク修理材にして軽くするのと同じような効果があります。実際に大型のカー用品店に行くと、一部のスポーツカー用に軽量のボンネットやトランクが売られていることがあります。
他にもホイールを軽量タイプに変えることでも燃費が向上します。
車のレースで使用される人気のスポーツカーなどは、トランクから窓、シートなども軽量のパーツが販売されています。
これらのグッズは車重が軽くなることで結果的に燃費が向上しますが、本来の目的はサーキットで少しでも速く走るための軽量化(改造)の一種です。
これらは一般的な車の使い方をする人が行うものではありません。そもそも物凄く高価なグッズなので燃費で元を取ることなど絶対にできません。全く節約につながらないので「燃費向上グッズ」とは分けて考える必要があります。
トラックのように頻繁に高速道路を走るような人であれば、空力を改善するパーツのおかげで空気抵抗が減って燃費が向上する可能性はあります。
実際に多くの大型トラックについているエアディフレクタは、高速道路のような100キロでの走行で燃費が5〜10%ぐらい向上すると言われています。
一方で街中の移動が中心の小型トラックや軽トラックには、このようなパーツが搭載されていない事が多いです。一般道のような60キロぐらいの走行では効果がほとんどなく、むしろ重たくなって燃費が悪化してしまいます。
それに一般の車はトラックほど切り立った平面のデザインでも重たくもないので、おそらく5%も燃費は向上しません。
これらのように車の性能を向上させるグッズのおかげで、結果的に燃費が向上する可能性がないとは言いませんが、少なくとも燃費で元が取れるケースは物凄く稀です。
これらを混同する人がいるので、「俺の車は明らかに燃費が向上したぜ!」といった意見が混ざってしまうのですが、高性能にする改造で燃費が向上する事もあるのですが、少なくとも車の燃費を向上させて節約したい人にとっては、全く意味がない情報なので分けて考える必要があります。
車の燃費アップにもプラシーボ効果?
車の燃費を向上させるグッズを取り付けた人の多くは、初めは効果があったように感じるものです。実際に昔の私もそう感じていました。
このような燃費が向上したという感じは、ダイエット食品の効果と似ています。
高額なダイエット食品を購入した人ほど覚悟が決まっており、損をしたくないという気持ちが働きます。すると自然と他のダイエットを無意識に行うようになります。
高額な痩せるサプリメントを購入した人というのは、いつもはエスカレーターだったのが自然と階段になるものです。様々な行動が無意識にダイエットに引っ張られます。
そして昼食のメニューも無意識にヘルシーなモノを選ぶようになります。
これは高額なダイエット食品や高額なスポーツジムと契約した人ほど効果があります。それだけ期待値が高いので、普段の行動にまで影響が出てしまいます。
逆に安いダイエット食品だと「どうせ効かないだろ」という意識が働き、無意識の行動はそれほど変わりません。
車に燃費を向上させるグッズを取り付けた場合も、同じように無意識にエコドライブになる可能性があります。
今まで飛ばしていた人の運転が自然と落ち着き、コンビニでエンジンをかけたままだった人が、こまめにエンジンを切るようになるものです。
普段全くエコドライブを全く意識していなかった人ほど、これらのような無意識だった運転が改善して燃費が良くなる余地が大きいので、燃費向上グッズのおかげで効果があったと感じてしまいます。
感じるといいますか、実際に燃費の数値が良くなるので燃費向上グッズの効果だと思うわけです。多くのダイエット食品も実際には運動(行動の変化)によって痩せたにも関わらず、その食品の効果だと思いこみます。
ですが、時が経つにしたがって効果は薄れてきます。体型も燃費も元に戻ってしまいます。
燃費向上グッズやダイエット食品の効果を本当に信じたがゆえに、無意識の行動をしなくても良いのだと脳が判断して油断して元に戻ってしまいます。
逆に普段からエコドライブを心がけている人が、燃費を向上させるグッズ使用しても効果を感じません。普段から体型維持を心がけている人が、ダイエット食品をとっても体型は変わらないようなことです。
人間の身体には思い込みによってプラシーボ効果が働くことがありますが、流石に機械の自動車にはそのような効果はありません。
自動車に現れた燃費の数値の変化は、あくまでも運転している人の行動に現れた変化です。
これを勘違いしてしまう人が多いので、あやしげな燃費向上グッズを信じて購入してしまう人が後を絶ちません。
愛車に少しでも良くなる事を取り入れたくなる気持ちもわかりますが、本当に愛車にとって良い事がなんなのかよく考えてみてください。
ガソリンの質を上げる添加剤やオイルの質を上げる添加剤を足すより、きちんとメンテナンスをしてあげる事の方が、本来の燃費を取り戻す事につながるはずです。
まとめ 燃費向上グッズに頼る前にするべき事
私が全ての燃費向上グッズを試したわけではないので、どの燃費向上グッズの効果が嘘だとは言えませんが、それらのグッズに頼る前にやるべきことがあります。
燃費向上グッズの購入を考えている人は、まずは車から無駄な荷物を降ろしてください。滅多に遠出をしない車であれば、ガソリンを満タンにしないのも車重を軽くするのに有効です。
そして定期的にタイヤの空気圧を調整してください。きちんと車をメンテナンスしてください。そして日頃からエコドライブを心がけてください。
燃費向上グッズの検証をするのはそれからでも遅くありません。本当に燃費が向上するグッズを見極めるためにも、予め燃費が悪くなる原因を取り除いておかなければなりません。
暴飲暴食をして太っている人ほど、ちょっとしたダイエットで簡単に痩せられるものですが、適正体重が60キロの人が100キロまで太っていると、普通の食事にするだけでどんどん痩せていきます。
デブのダイエットとボクサーが1キロ絞る大変さが全然違うように、極端に悪化している燃費を取り戻す事は、それほど難しい事ではありません。
燃費が悪化している状態の車ほど、ちょっとした事で改善する余地が大きいだけに、メンテナンス程度の効果しかない燃費向上グッズでも恩恵があるので、勘違いしてしまう人が多いのですが、大抵はメンテナンスよりも高価になるので節約にはならないものです。
燃費向上グッズに頼る前にやるべき事があるので、日頃からきちんと愛車のメンテナンスを心がけ、エコドライブを意識してほしいと思います。
泥だらけの車を洗車するだけで少しは重量が軽くなりますし、空気抵抗だって若干良くなるかも知れません。それらの基本と向き合わずに燃費向上グッズを取り入れてしまうと、本当に効果があったとしても判断できませんよ。
追記 何とトヨタが・・・
驚くべきことに、なんとあのトヨタが一部のスポーツカーに燃費向上効果のあるアルミテープを装着するようになりました。
このアルミテープによる効果を簡単に要約すると、車のボディに流れている電気の流れを整えることにより、空気抵抗が改善されてパフォーマンスアップにつながるそうです。
まさにカー用品店で売られているあやしげな燃費向上グッズのような説明なのですが、しっかりとトヨタが特許を取得した技術のようで、高級車のレクサスにも一部採用されているそうです。
自動車メーカーがこのような製品を取り入れることは大変珍しく、自動車雑誌でも話題になりました(⇒の雑誌の上の文字)。
サーキットでスポーツカーがエンジン全開で走るようなケースだと、僅かな空気抵抗の違いでも差を感じられるのかも知れません。
プリウスのようなエコカーも空気抵抗を重視してデザインされているので、アルミテープで僅かでもパフォーマンスの向上が認められるのであれば、いずれエコカーや大衆車にも装着されるものと思われます。
コンマ何秒を争うレース車両やスポーツカーには最新の技術が導入されます。そこから一般の車に技術が普及することは珍しくありません。あくまでもコストパフォーマンス次第です。
アルミテープの原価などたかが知れているので、本当に燃費向上の効果があるのであれば、いずれプリウスやカローラのような大衆車にも装着されるのではないでしょうか。
現段階で試すのはおすすめしませんが、カローラのような大衆車の新モデルに装着されるような燃費向上グッズが登場すれば、試してみる価値があるのかも知れません。エコタイヤのようにメーカーが認めているものまで否定しているわけではないので悪しからず。
コメント
確かに最初は燃費が良くなった感じがするのに、そのうち元に戻るんだよなぁ
俺の運転が変わっただけなのかwww
by たーじ
まぁほとんどの燃費向上グッズは怪しいですね
エンジンオイルの性能をアップする添加材を入れるぐらいなら
オイルのグレードを上げた方がずっと効果があるし
少なくとも燃費で購入額の元が取れるものはないでしょ
by 匿名
アーシング懐かしいな~笑
当時の車好きはこぞって付けていたよね
by 匿名
ガソリンタンクに入れる。金属や錠剤もありましたよね
by 匿名
オレの車はガソリンに入れる洗浄剤で燃費が2割ぐらい良くなったぜ!エンジン内部のメンテナンスなんて何十万コースだから、こっちの方が絶対にコスパ良いだろ!
by 匿名
アーシングはとっくにメーカーが採用してるよ
今の新しい車はエンジンの周りにたくさんアーシングしてある
バッテリーの-端子にも昔の車はケーブル1本だったが今の車は数本来ている
純正だから目立たないだけ
by 匿名